ロビーの扉が開くことなど、ありはしない。
破壊しようにも力は使えないし、なによりびくともしない。
『此方は自動放送です。空間完全放棄措置の完了をお知らせします』
……
………………
……どれほど時間が経っただろうか
『此方は自動放送です。空間完全放棄措置の完了をお知らせします』
無機質な自動放送が繰り返され続けている。
ただただ同じ、寸分違わず同じ自動放送が、ずっと
『此方は自動放送です。空間完全放棄措置の完了をお知らせします』
いつの間にか、ロビーは荒廃していった
プールの水は濁り、悪臭を放ち始めた
『此方は自動放送です。空間完全放棄措置の完了をお知らせします』
倉庫は荒れ切って凍えるほどだ。
廊下にはゴミが転がり倒れている
『此方は自動放送です。空間完全放棄措置の完了をお知らせします』
シャワーからは錆びた水が流れてくる
冷凍食料室には、缶詰がそこらに転がっている
『此方は自動放送です。空間完全放棄措置の完了をお知らせします』
今、どれだけ他人が生きているだろうか
何人あの部屋に向かい、何人戻ってきただろうか
そもそも自分が生きているのだろうかも不確かかもしれない。
『此方は自動放送です。空間完全放棄措置の完了をお知らせします』
……この空間から出る手段は
ない
ない