花緑あずき (Eno:16)
冷凍食料室の黒いタイルに寝かされている。
ある男と繋がれた手には、お揃いの布切れが人差し指に巻かれている。
動かされない限りそのまま、ずっと。
名前:花緑あずき(かろく あずき)
年齢:17歳
身長:155cm
ノリと勢いで生きている女子高生。
脱出させてくれるって言ってるし大丈夫ですよ!
明るく元気な振る舞いをしているが、内心は非常にドライで倫理観が薄い合理主義者。
助けが来るなど最初から思ってはいなかった。
自分の考えが理解されないこと、人の考えが理解出来ないことは常なので、何も考えず明るくノリで生きているように振る舞い社会に馴染んでいた。
人を刺し殺して資源を得ていた事を正直に話した。
7日間の生活が終わったら連行される証である、ネクタイの切れ端を右の人差し指に巻いている。
すきなひとと心中した。
理解されない殺人鬼は、ただの人間へと落とされてしまった。
1日目/襲撃(リィナ)
2日目/襲撃(リィナ)
3日目/襲撃(リィナ)(死亡)
4日目/襲撃(花緑あずき)
5日目/休息
6日目/休息
7日目/襲撃(樽井 浩平)(死亡)
暗闇に乗じて人を刺す事には慣れていました。
死も二人をわかてないんだ、と思うと、
嬉しくて仕方がありませんでした。
しっかりと、心臓を刺しました。
その胸はもう、私の事しか考えて欲しくなかったから。
私のからだにも、痛みが走りました。
暗い中でも、顔が見えました。
浩平さん。わたしのすきなひと。
私だけを捕まえて、連れて行ってくれる人。
あなたも最期に、私の顔が見えたでしょうか?
いいえ、最後ではありません。
これから先も、ずっと。
地獄でも、一緒なのだから。
ずっと一緒に、笑っていましょう。
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ここで目を覚まして、放送を聞いて、建物を見て、箱の中身を見て。
ああ、ここから出られることはないんだなと悟りました。
希望をちらつかされた7日間が終われば物資の奪い合いが始まる。
なら死なない為にやるべき事は、人よりたくさん、早く物資を得ることです。
初めはみんなの平穏を願う天使さんを狙おうかと思いました。
『みんな』の為に生きているのなら、役に立てるなら本望でしょう?
けれど、それよりも。ロビーの隅でぴくりとも動かない人。
世界に絶望しきったような人の為に、毎日食料が出され。
それが消費されず腐っていって、資源が使われていくのなら。
あずきが使う方が余程有意義だと思いました。
だから闇に乗じて刺しました。金貨を奪いました。
けれどやっぱり反応はなくて。でも息はしていました。
人って刺されてもすぐには死なないんですね。
だから次の日も刺しました。その次の日も刺しました。
どこまで刺したら死ぬのか興味があったからです。
そうしたら死んでしまいました。
やっぱり刺されると、人って死ぬみたいです。
想定と結果に差異が無くてよかったです。
袋に数字が表示されるようになりました。
最初より多い金貨を持っていることを言及されたので、
正直に答えたら、とても怒られました。
みんな、バケモノでも見るかのような目で見て。
人を襲っている事を隠さない蛇さんもいるのに?
そんな事してないような顔で隣人を刺してる人も沢山いるのに?
どうして無駄になる資源をもらっただけのあずきだけが怒られるのでしょう。
たくさんの人が傍からいなくなりました。
天使さんは理解をしてくれていたのが嬉しかったです。
おじさんに、ネクタイで『逮捕』されました。
それは、あずきにこれ以上人を襲わせない為だけじゃなくて。
あずきがもう無力である事を周りに示すものに思えました。
おじさんからしたら許せない事をしているであろうあずきを、
心配して、守ろうとしてくれている事が嬉しくて。
非合理的だけれど、もう人を襲うのはやめようと思いました。
愛ちゃんに、
愛ちゃんを、
大切な人だから、役に立ちたくて、
だから、復讐の『練習台』に、
でも、怖くて、苦しくて、
全部がわからなくなってしまいました。
こんな想いをするために生きているのでしょうか?
生きるために行動をしたら怒られて見捨てられて、
生きていてもこんな思いをするのなら、
生きていたくないと思いました。
おじさんと、一緒に死ぬ約束をしました。
助けがきて、外に出られるなら、
刑務所に連行されてしまいますが。
そうでなければ、地獄へ連行してもらいます。
最初はおじさんに見捨てられたんだと思いましたが、
死のうとしてるんだと気づいて、許せませんでした。
本当は生きていて欲しかったけど、
どうせ助けなんて来ないだろうと思いますし、
あずきも生きていたくなくなっていましたから。
一人で死ぬよりは、二人で死ぬ方が効率的です。
……それに、どうしてか、
そうしたら寂しくない気がしました。
約束の印に、おじさんのネクタイの切れ端を、
右の人差し指に結んでもらいました。
おじさんの左の人差し指にも、同じものが結ばれています。
お揃いです。
愛ちゃんが死にました。
こんな所で死ぬ訳にはいかないって言ってたのに。
ここでは死ぬ気がなければ死ぬのは難しいです。
本当はずっと死にたかったのでしょうか?
あずきが全てを受け入れられなかったからでしょうか?
わかりません。
わかりません。
よく考えたら、助けなんてこないんでした。
外になんて、どうせ出られないんでした。
あずきも死ぬんだから、
誰が死んでも悲しくないんでした。
手錠のお兄さんが死にました。
誰が死んでも悲しくないはずなのに、
どうしてか、寂しくなってしまいました。
みんなが廊下からいなくなっても、
ずっとそこにいてくれたお兄さんと、
もっとお話しすればよかったかもしれません。
聖書には、あずきたちと過ごしたことが、
楽しかったと書かれていました。
あずきが、迷惑以外のものをあげられたなら、
とても嬉しいと思いました。
手錠のお兄さんの言った通り、
廊下はどこへも繋がらない、
不自由な場所になってしまいました。
みんな動揺していたけれど、
逆に覚悟が決まった人もいたみたいで。
柚葉さんと一緒に、サチさんが帰って来てくれました。
またみんなで一緒に居られるようになって、
あずきはとても嬉しかったです。
新しく解放された冷凍食料室は、
生きる意志のない人を食料にして、
生きる意志のある人を生かす為のものでした。
合理的で便利な施設が解放されたと思いました。
あずきも生きたかったら、
きっとここで作られた食料を食べていたのでしょう。
名前も知らない牛や豚を食べるよりも、
大切な人を血肉にした方が嬉しいと思うのですが、
『普通』はそうは思わないのでしょうか?
一緒に地獄に行くことが決まりましたから、
おじさんに一緒にプレスされようと提案しました。
おじさんは誰にも食べられたくないと言いました。
あずきを独占したいと言いました。
理解が追いつきませんでした。
認めたくなかったけど、
あずきもおじさんの事が、好きだったから。
どんどん気持ちが溢れてきて、
まるで人間になってしまったみたいでした。
誰からも、人間じゃないみたいな扱いをされていたのに。
ナイフでお互いの心を刺して、
一緒に死ぬことにしました。
死すら二人を引き裂けないのだと思うと、
嬉しくて、少し泣いてしまいそうでした。
暗闇に乗じて人を刺す事には慣れていました。
死も二人をわかてないんだ、と思うと、
嬉しくて仕方がありませんでした。
しっかりと、心臓を刺しました。
その胸はもう、私の事しか考えて欲しくなかったから。
私の胸にも、痛みが走りました。
暗い中でも、顔が見えました。
浩平さん。わたしのすきなひと。
私だけを捕まえて、連れて行ってくれる人。
あなたも最期に、私の顔が見えたでしょうか?
いいえ、最後ではありません。
これから先も、ずっと。
地獄でも、一緒なのだから。
ずっと一緒に、笑っていましょう。
生まれて初めて、
この感情が幸せというものなんだな、と
知りました。
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