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三毛他 輪世 (Eno:19)

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『キミは輪世。リンセだ。廻る世界を旅できるように。
 この世界は終わってしまうからね』

146cm、セーラー服の少女。猫の耳が生えており、尻尾はない。
吐く息は白く甘い。非力な子供である。
低めのか細い声で喋る。足音が小さい。

あなたの足音を聞いている。

illust: まろい風 様( https://picrew.me/ja/image_maker/2108449 )

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リンセの正体は研究シェルターで作られた"バイオ観測機"です。
たとえ核戦争が始まっても世界の隅々までを見られるように。
別のシェルターへと情報を運んで世界の再開発を行えるように。
そんな目的で作られた、親も家族もない道具です。

研究シェルターの人たちは、おかしいけれど優しかったです。
最低限、では言い表せないほどの知識を。
戦前の文化を、風景を、なにもかも。
詰め込めるだけ詰め込んで、家族のように接してくれました。
だから外の世界を旅するのだって、最初は平気でした。

ひとつの役目を終えて、帰ってきたとき。
全員が死んでいたことを知るまでは。

滅んだ世界を歩き回りました。
シェルターのひとつひとつを訪ねました。
でも、どこだって。死しかそこにはありませんでした。
食料が無くなったわけでも、内乱が起きたわけでもない。
人間という存在が静かに息絶えたのでした。

研究シェルターの人たちは、とてもおかしなひとでした。
だからリンセに寿命を作らなかったのです。
修復すればまた使えるから、ずっと使いたいから、とか。
理由はいくらでも作れたでしょうけれど。
ひとりが漏らした言葉は、今でも覚えています。

「ひとがたの機械であっても、ひとがただから。
 殺してしまうのは目覚めが悪い」

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#1
いろんなひとがいた。
カラフルなひと。ちいさなひと。うでのないひと?
おとこのひと。おんなのひと。てんしのひと。

今はどれも等しいだけの命。
生も死も等しくやってくる。
だから、わたしにとって平等に■■■で。

平等にいとおしい。

#2
てんしのひとがいなくなった、らしい。
襲撃者から聞いた話ではあるけれど。
この無限のようで狭い空間で消えるなんて、できるのかな。

少ない物資を分けていたらユキネやリオンからいっぱい貰っちゃった。
いいのかな。わたしなんかが貰っちゃって。
だって。

帰ったところで、待つひとなんていないんだから。

#3
どうしましょう。リンセ以外の猫の人。
リンセ、好きになってしまったかもしれません。

……スキが増えるのは、あまりよくないこと。
だって、だって。みんな死んじゃうんだから。
ここに来る前の世界ではそうだった。
みんな、"先に死んでいった"。

でも、ここって。誰もが等しく死んでいくのなら。
天使も悪魔も鬼も蛇も関係ないのだとしたら。
やっと見つかったのかもしれません。
リンセのための終止符が。

猫さんはあたたかくて、細くて、ちょっとだけ小さくて。
やっぱり、かわいいです。

#4
死体が増えていました。
箱の中に隠れたものと、そうでないもの。
念入りに執拗に辺りを確認していたので。
きっと襲われる予想は立っていたのでしょう。

……本当に?
あんなに必死に隠れていて、「襲われる」でしょうか?

知らない場所からの脱出には、ナイフが必要だそうです。
一度消えた彼女がナイフを持っていたのなら。
本当に箱の中に隠れられていたのなら。
誰も見つけることができなかったのなら。

彼女を殺したのは、誰?

===

猫さんの相容れない人って、誰なんでしょう。
廊下が気になります。でも、廊下の雰囲気はキライです。
仲良しこよしは別に構わないけれど。
ただ割って入れないだけです。
ただ。あの血腥い匂いだけは慣れませんでした。

明日は平和でありますよう。
今日を無事に生き延びられますよう。

#5
猫ちゃん。……ユメに、想いを伝えました。
しっかりと。逃げられないように。
ここから出る理由はありません。
生きる理由も、あの世界にはありませんから。

人の温もりなんて何年ぶりでしょうか。
暗くつめたいシャワールームが、
どれだけ明るく暖かかったでしょうか。
この無彩色の部屋が、幾らだって眩しく鮮やかに見えました。

リンセは、ここを出ません。
それは皆を置いていくことになるけれど。
後悔はありません。
だって、皆の優しさに触れ過ぎたら。
二度と毒の匙を飲み下せなくなってしまうから。
銀の弾丸を受けられなくなってしまうから。

アナウンスは希望を伝えてくる。
けれどリンセは、これでいいのです。

#6
暗闇の中。
狙った狩人は無事に襲えたけれど。
その他の足音までは追えませんでした。
ユメはひどく傷付いていて、でも。まだ生きていました。
ありったけの処置を行って。
リンセたちのユメを叶えに行けるように。
いっぱい、お話しなくちゃいけませんね。
どうせここからは誰も出られない。
なら、みんな一緒でいられるでしょう?

#7
不穏な始まり方の、平穏な一日でした。
誕生日のひとは、さいしょに怪しく感じたとおりに。
やっぱり、人を襲っていました。
手段はやっぱり、まだ信じられないけれど。
ユメを刺したことは恨んでいません。
誰も殺さないように、それが本当だったのなら。

あの子にもしあわせが降ってきますように。

===

何人かで部屋の飾り付けをして。
そのずっとずっと前から、ユキネは壊れていて。
こればかりは、どうしてもどうしても。
あの部屋で何があったのか、そもそもその部屋がなんなのか。
知りたくありません。
増えてゆく缶詰。中身は肉だそうです。
知りたくありません。
リオンも帰ってきてくれました。
もう少しだけ、あともう少しだけ。
なんて言っていたら、きっと延々と求めてしまうのでしょうね。

みんなに、あなたに、しあわせがありますように。

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――その続きは、二人だけの秘密です。

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PL: Aila_Dis_Cord

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