ミルメコエル (Eno:3)
天使ミルメコエル。
死んでしまった数多の魂を神の元へいざなってきた運天使。
あらゆる権能が失せた今でも救いを説く。
身長:144.6cm
性別:無性
のたまうことのなかには、嘘も混ざっていた。
-------- 記録開始 --------
--------- ■日目 ---------
倉庫へ遊びに行き
-------- ■■日目 --------
歌を合わせて合唱をして
-------- ■■日目 --------
何処か壊せる部分はないか探して
-------- ■■日目 --------
-------- ■■日目 --------
積み木に使えそうなものを探して
-------- ■■日目 --------
水を煮沸消毒しようとして
-------- ■■日目 --------
祈りながら暗闇を迎えて
-------- ■■日目 --------
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-------- ■■日目 --------
どれほど時間が経っただろうか。
『此方は自動放送です。空間完全放棄措置の完了をお知らせします』
今、どれだけの人が生きているのだろうか。
動くことさえ覚束ない。
自分は飢えてこうなったのだろうか。
それとも刺されてこうなっているのだろうか。
(………私は………)
それでも、何故か思考は続けられる。
これは確か、走馬灯という現象だったか。
(私は、嘘付きだ)
(本当は、人々を先に導くことなんてできない)
(確かに、魂を運ぶことは出来るけれど)
(天上に神なんていなくて、いるのは魂を喰らい続けるバケモンだけ)
(天使なんて、そのバケモンから生まれて何故か意思を持った存在でしかない)
(信仰も、魂を運ぶ罪悪感から上級天使が作ったハリボテ細工)
(バケモンに餌を運び続けることのお利口な理由付け)
(それにしても人間の魂なんて殆ど運んだことなくて、アリの魂の担当だった)
(祈りの言葉は本当はもっと長いけど、言いやすくないから簡略化した)
(他にも。沢山。嘘付き。嘘付き。嘘付き……)
(ねえ、天使サマはホントは人類の敵だったし、輪廻は司ってないし)
(ちっぽけな下級の羽アリの、嘘付き天使でしかない)
(ごめん、ごめん、約束は果たせない)
(権能は使えない 魂を何処か別の場所に運ぶことさえ出来ない)
全部洗いざらいぶちまけたい。
糾弾されて拷問されて殺されたい。
でも、そんなことは絶対にしちゃいけない。
だって『それで誰が救われるんだ』?
(……その逆で『誰かを救えるかも知れない』なら、やるしかないんだよ)
(救いって何かが、最期まで絶望しきらずに死んでいけることなら)
(人生の終わりに、何かを信じられていけるのなら)
(その可能性を、誰か一人にでも増やせるんなら)
(やるしかないし、やるしかなかったし、やったんだ)
(ああクソッタレの自己弁護おめでとう大罪人 詫びて死ねよ 死にます)
これでよかったか ということの同意は、
誰からも取れないし、取るべきではない。
宗教というのは、教主というものの資格は、
『死ぬまで嘘を付くこと』だ。
それが出来る者だけが、人を救える。
自分自身さえも騙せるような嘘を付いた者だけが。
天使が天使の視点で見てきた宗教も、
全てそういうものであったから。
(……出来たかな)
(害虫のクズの嘘付きにも)
(一欠片だけだって)
(誰かを救うことは出来たのかな)
わからない。答えはない。
死という断絶からは何も返ってはこないから。
死んだものが真に救われたかなんて、永遠にわからない。
(ああ)
しかし、一つだけ失敗をしたのは確かだった。
(しにたく、ないな……)
自分自身を騙すことは、最期まで出来なかったな。
──それでも、
手は固く、結び続けたままにして。
こんな考えなんて、絶対口にはせず、
勝負の為に、負けない為に、
笑って終わってやるんだ。
-------- これ以降の記録はない --------
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