シダレ (Eno:6)

物心が付くより前に両親を亡くした。
だけど、よその家に引き取られて、その家の子になった。
利口な妹が出来た。自分もいい子に育っていると思う。
両親の勧めで女学院に入学した。生徒会役員に選ばれた。
姉妹仲は良好だった。妹から嫌いだと言われた。なんで。

雨雫に打たれて散る桜は泥を被る。
ぎくしゃく空を仰げば一面のモノクロ。
夢だらけの人生に色を付けるなら灰だ。
幸福はホールケーキ。余分に取り過ぎてしまった。
余計なボトルネック。曇天が晴れないのは何故か。
小皿に取り分けた白すら、今は灰に褪せて見える。
枯れ落ちた幹に芽生えたのは、なにか。
わからないまま、雨に濡れた花弁は散る。

成績だって優秀で、友達だって沢山居た。順風満帆な人生だった。
なのに、なにかが決定的なまでに欠けている気がする。
なのに、なにかが致命的なまでに満ちている気もする。

それは、他ならない自分自身だった。



PL：ななせ
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