ロッカーやソファ、誰もいない受付がある
テレビと、壁の上の方にスピーカーがある
窓はなく、扉も開かないが空調は良い
「アザレアさん。いい名前だね」
うれしそうな様子につられて笑顔になる。
「俺は加持。加持楓です。よろしく」
「名刺は切らして……さっきなんかあったな」
「やったー」
多分全部持ってるけどまだ全然食べきれていない。
おいしいもの情報はいつでもお待ちしています。
「おっと、名乗っていませんでしたね」
「普段だったら名乗る名は持ち合わせておりませんというところですが」
「なんと! 今回に限り! ……いえ、限らずこの先もずっと」
「アザレアです。……ここで出会った方につけてもらったんですよ」てれ。
「お兄さんは?」
「若いんだし、色々やってみるのもいいと思うよ」
何を考えてるかはつゆ知らず、あっ今俺おっさんぽかったかな……なんて気にしている。
「ごちそうさま」
「俺も面白いものとかおいしいもの見つけたら知らせるよ。ええと……」
結構話したのに名前聞いてなかったな。
「きっかけ……ふふ。いいですね」
「視野ちょっと狭かったかもしれません」
「もっといい方法があるのかも」
例えば……そう、捨てたはずのやつが幸せそうに楽しそうにしてたら。
見つけたとき、きっと不愉快だろうな。
「よかった。いろいろ食べ物あるのでいろいろ探してみると楽しいですよ」
「娯楽もあるし……もぐ」 カードとか。
アザレア はケーキを食べた。おいしい ポイント+100、HP+100
寝不足 はケーキを食べた。おいしい ポイント+100、HP+100
「前向きだね。ここに来たのもきっかけと考えれば悪くないか……」
正直人探しは厳しそうだし、他にしたいこと見つかるといい。俺も転職しようかな……。
「おいしい。久々にまともなもん食べた気がするよ」
寝てる人もいるしいい時間な気がするけど、ケーキも食べてしまおう……
「たしかに……」
放棄された研究施設が朽ちて壊れる程度の年月が経っている。
……生存すらあやしいところだが。それでも探すのだ。
「そうですね。思えば、人探し以外に目を向けたことは今までなかったので……色々考えるいいきっかけにはなってます」
「もぐ……」
初日はホールケーキ人に分けずに丸ごと食べて具合悪くなってたやつが、人に食べ物を分け与えることができるようになった。
これはめざましい成長と言えよう……そうかな……。
鳥の煮込みを食べた。おいしい。
鳥の煮込みを食べた。おいしい。
「がんばれ……」心からの応援と同情。
「せめて相手が居そうな場所とかわかるといいのにな」
「そんな……帰ってしたいこととか……いや、ごめん」
それは人探しだよな。
「こんなのあったんだ。ありがとう」
おいしそうなものをもらった。ありがたくいただく。
「そうです! ……ほかにヒントもないので」しゅん。
ちょいむずとは本人もわかってはいる。
とはいえ、諦めるという選択肢もない。
「食べるものもあるので、正直そんなには……」のんき。
そう言って鳥の煮込みらしきものと、一切れのケーキをわたすだろう。ぐいぐい。
「えっ?ああー、向こうに見つけてもらうのか。
んんー、再会?できるといいな……」
女装の理由は納得。厳しそう……とは言わないが顔には出てしまうかも。
「そっか……そういうもんか。
何にせよここからは出たいよな」
仕事はともかく、できれば家の布団で寝たい……。
「えへ。ありがとうございます」
「特徴……知らないです」 探す気ある???????
「仲間……? あぁ、パーティは今は組んでないので大丈夫ですよ」
元々、決まった相手と組むことはあまりない。人探しの都合もあるので。
「見つかるといいね。
力になれるかは微妙だけど、よければ特徴とか……」
万が一どこかで見かけたら伝言くらいはできるだろうか……。
「お互いに……。
まああんまり帰りたくない気もするけど、仕事溜まっていくからなあ。
お兄さんも仲間の人とか心配してるだろうし……」
「人探しをしててしぶしぶこの格好ですね……用事が終わったらもう少しまともな格好します」
永劫見つからなそう。
「あわわ……早く帰れるといいですね」
そうかなあ。もう少しのんびりできるといい……。
「あれ、したいわけではない……?」
「いやー、本当は今日も仕事だったんだけど……参ったね。
……冒険者。いいね、楽しそうだ」
ゲームかな? 最近してないな……
「したい格好。ウン……」
ほんとはかっこいい格好したいんですけど。趣味じゃないんですけど。
「三日ぶり????」24時間どこじゃなかった。
「私は冒険者の真似事をしています。ヒーラーですね。荒事は前衛さんにおまかせ……」
人任せがスタンダード……。
「いやいや、したい格好するのがいいと思うよ……」
趣味だと思ってフォローする。
「そう……業界によるよな。ゆるく働ける方がたぶんいい……。
3日ぶりに帰れそうだったんだけど気付いたらここで」
”世界”をさらっと聞き流す。異世界への対応が追い付いておらず、残業ない仕事をしていると理解。
「お嬢……じゃない、お兄さんはどんな仕事を?」
「お布団替わりかな……寝てる間は静かにしてくれるといいね……おやすみなさい」 小声。
『ワウ!』 『ワウ!』 『ワウ!』 『ワウ!』 缶詰から狼を出し、抱きつきながら丸まってソファーの上で寝始めるだろうか 『ワウ!』 『ワウ!』 『ワウ!』 『ワウ!』
「いやいや、性別に見合わぬ恰好をしてるやつがわるいので……」
ほんとにな。
「残業かあ……結構ゆるめな世界の出身だから、その言葉が出てくるような世界の職業形態に関してはあまり知識がないのですが……多分、普通の時間を超えて働くものですよね? 24時間とか」
そこまでじゃなくない?
ロビーにやってきて、隅っこのソファーに座る子供
「あ、ありがとう……。やさしいね」
「おわ、こちらこそごめんなさい。似合ってるから気付かなかった」
焦ってぺこぺこ謝る……。
「残業」
住んでいる世界ではいまいち耳慣れない言葉だが、埋め込まれた外的知識のおかげで何を指すか理解できた。
「がんばりやさんなんですね……」
「……」
(男だが黙っておけば多分バレないので黙っておこう……いや黙ってるメリット特にねえな)
「ややこしい格好でごめんなさい、男です」
「え?ええと……何だろう……残業……?」
急に聞かれて要領を得ない。
「……何してるんだろうな、俺……。お嬢さんは俺みたいになるなよ……」
「えぇ、きをつけましょう……」
着地点自体は悪くないな……。
「お兄さんは普段何されてる方なんです?」
あまり調子に乗りそうなタイプには見えないが。
「つまり……調子に乗るとしぬのか?気を付けよう……」
そういうことにした。この推測自体がだいぶ調子乗ってる……。
「なるほど?」 隠者のこと陰キャ扱いしたなこいつ……。
「隠者の逆だから……陽キャかな?
でもしんでる……」
個人的見解を述べた。何もわからない。