――――あー、あー。こちら空間対策部門。
探査部門L-0021、聞こえ……あー
目を覚ますと見知らぬ場所にいた。
どう記憶をこねくり回しても知らない場所だった。
見渡す限り気持ち悪いほどの青空が広がっている。
地平線の果てまで、嫌になる程長閑な草原が広がっている。
なんと平和な場所か……と呆けるか、警戒が勝つか。
しかし、すぐにでもキミは自分のあらゆる「力」が使えないことに気が付くだろう
「力」がないなら、あまり変わらないかもしれない。
だが――――悠長にはできないようだ。
地平線の向こう側、みえる。
空間のテクスチャが赤く剥がれ崩れていく
力も使えない中、キミは――――
逃げる中、キミはぽつんとあった建物に逃げ込んだ。
幸い、テクスチャの崩壊はずっと向こうで停止していたらしい。
……机に置かれた通信機から音がする。
――――あー、あー。こちら空間対策部門。
探査部門L-0021、聞こえ……あー
……違いますね。あーあー……
また面倒に………終端程ではないか……
あー、何方か存じ上げませんが、少々お待ちください。
物音。
向こう側からなにやら途切れ途切れの人の声が聞こえる
失礼。お待たせしました
ええ、質問疑問はあるでしょうが、まずは単刀直入に
申し訳ありませんが、この空間の調査にご協力ください
疑問、疑念、困惑、混乱――――何かしらがよぎるだろう。
周囲には、同じ状況であろう他人がいる。ざわめく。
……もう!説明不足が過ぎます!
こんにちは。私たちは『DREAM』の者です
"Dimensional Research Exploration and Anomaly Monitoring"
'異次元研究探索と異常監視'。
今貴方たちがいるような空間の研究や管理をする組織と思ってください。
あなた方がいた世界とは、全く違う空間です。
閉ざされた異世界、とでも。既存の法則は存在しません。
だから、魔法も異能も権能も、その他類するものも使用できなくなっている
通信機の向こうの人物は、そう説明する。
疑問はわかります。失礼なことを言っていることも承知です
けど、調査しないと安全に帰せないんです
この空間は本来なら安定していた。
だが、現在異常が発生しており、不安定で危険なものとなっている
そのため、本来安全に帰還させるためのモノがどう動くかわからない。
キミたちの帰るための方法は、それしかない。
だましてるんじゃないかって思ってる子もいると思います
脅しに聞こえるかもしれないですが、私達は皆さんをきちんとお帰ししたいのです!
どうやら、本当にこれしかないらしい。
とにかく
協力してくださるなら、右奥の部屋にいる機動探査隊から資料を受け取ってください
……ま、ここでぼんやりしても咎めはしませんが。
「ふざけんな!!」
「勝手に連れてきてその上で協力しろ?!冗談じゃない!!!」
「協力なんぞ誰がするものか!!」
「自分で脱出方法くらい探せる!こんなところに居られるか!!」
………
騒がしい誰かは、一人で出て行ったようだ。