オリ (Eno:113)
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りん、りん。
袖口から聞こえる音の正体は、花畑の花を用いて作った封魔護鈴を編み込んだ腕輪。
──もう、枯れてしまっただろうか。
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Ori | 男 | 年齢不詳
旅人。生死や細かいことにとらわれない。
帰る場所があるわけでもない。此処では人間と変わらない。
いつだって緩やかに笑んでいる。
終わらない旅をしている。
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時空を旅するもの。
その度に捻じれて、再構築される。
まるで初期化、のようだった。
朧げに残った記憶も、連続していない。
夢から覚めて、また夢を見る。
旅の始まりはいつも、まっさらな命が一つ。
旅の終わりはいつも、新たな旅の始まりを意味する。
何処から来て、何処へ行くのか。
何処へだって行けるし、何処にだって行けない。
生きているのか、死んでいるのか。
生きていながら、死んでいるのかもしれない。
何度でも。
そうやって、旅するだけの命だ。
✧
“法則”は果たして。
行方は知れず。生死も知れず。
虚無に呑まれて消えたのか。
また何も知らぬ旅人が生まれるだろうか。
或いは。斯様な終幕であれば。
此処には初めから何も無かった。
かもしれない。
名を知る者も、居ないのだから。
もう、鈴の音が聞こえることはない。
それだけは確かだった。