”境界線の鏡” (Eno:22)
「ね。また会いましょう」
家畜を食べなかった、存在。
彼は家畜のはずだった『ヒト』を好み、観察し、学び、友になろうとしていた。
『ヒト』は最初、怯えながらも友好的にした。
だけど、裏切って捕まえた。
彼の────『天地喰い』の持つ”ゆめをかなえるちから”が欲しかったから。
それでも彼は諦めきれなかった。
だから、だからせめて──────自分を知らないここなら、友達ができるかもって思ったんです。
『天地喰い』─希少種族であり、元よりとある世界にいた種族。
あらゆるものを喰らえ、長寿であり、特殊な力を持つ。
ヒトとは、彼らのために投げ込まれた餌だった。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
"ミラー"と名乗る男。
触手を持ち、様々な不可思議な現象を起こしたり……できたはずだった。
今は触手もちょっと重いものが持てる程度まで弱体化。不思議な力もクソもない。
元いた世界では、「組織」に捕まっていたらしい。ろくな待遇では無かったようだ。
『天地喰い』と呼ばれる種族。天使、魔物、ヒト、現象、概念等様々なものを食べる。
無論、今はそういった力はない。ヒトを食べたことは無いらしい。
ヒトのことが分からないから、知りたい。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
その世界には、空に穴があった。
それは、真っ黒な穴だった。
それは、ぽっかりと空いた穴だった。
ある時、世界に存在が発生した。
存在は数が少なかった。
そうしたら、しばらくしたら、真っ黒な穴から何かが投げ込まれた。
それは弱くて増えて群れる動物だった。
およそ星型の形状をした。
四肢を持ち、頭がひとつの。
それを、誰かが「ヒト」と呼んだ。
それは、存在達のために投げ込まれた『餌』だった。
それは、存在達のために造られた『家畜』だった。
存在達は喜んで食べた。存在達は喜んで育てた。
だけど、存在のうちのひとつだけは、食べなかった。
見ていて面白かった。話して楽しかった。
そうしたら、増えに増えた家畜達は文明を作り、
社会を作り、
そして世界に広がり、あたかも自分たちこそ支配者種族だと勘違いした。
ヒトは組織を作り、ヒトの中の平和を守った。
守るために、異常を、有害を集め調べ壊し管理し蓋をした。
ある時、存在のうちのひとつが捕まった。
ヒトは増長していた。有害なものどもを制圧して、意のままにできると。
酷い扱いをした。
けど、存在のうちのひとつはヒトが好きだったから、わらっていた。
────空の穴からヒビがはいり、沢山投げ込まれた「異常」によってヒトの組織は壊滅した。
【ソレ】は気に入らなかった。お気に入りが酷い目にあっている光景が。
【ソレ】は気に食わなかった。家畜がお気に入りにたかる様子が。
【ソレ】は気に触った。もういらないと思った。
だから、片付けることにした。
───────
────
──
─────崩れる建物の中から見えた空。
僕は確かに見ました。黒い穴────
────黒い星からひび割れて行く空を。
────黒い星から剥がれていく空間を。
────黒い星が僕らを見ていることを。
あれは星なんかじゃなかった。
あれは───────『目』だったんだ。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
画像/海ひつじ屋め〜か〜 様
https://picrew.me/ja/image_maker/2151243
立ち絵画像:自作
PL:煮物鳥ヤフェト@Nimonotori