————現状死者4名。
凶器はナイフによる刺傷。
犯行は停電時、暗闇の中での犯行。
4人含め死因は出血死と見ていい。
尚、これからも死者は増えると予測。
個室に霊安室も作られた。
死体はそこに運べばいいだろう。
今の所僕は誰にも狙われておらず、
医者や悪魔やら、動いてない人がマークされているらしい。
明日も誰かが死ぬのだろうか。
出口は未だ見つからない。
葬式という名の狂った資源集めのイベントも起きてしまうぐらいだ。
アレをまともに見ようとしたら記憶の一部が出て来そうになったが尋常じゃない頭の痛みが襲って来た。
探偵業で人の死には慣れている筈なのに。
どうして今になってトラウマのように冷や汗が出るのか、不思議で仕方ない。
何があろうと自分とは向き合いたい。
たとえ壊れることになろうが。
眠りについてから見た記憶の断片はどれも寂しかったな。
自分の名前も親しかった者の名前も、あの時の僕も思い出したのに。
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『助手くん!ぼさっとしてないでさっさと行くぞ!謎は待ってくれないのだから』
…今日は何処に連れて行かれるんだろう。
憂鬱な気分のまま探偵倶楽部の冬休み期間の仕事が始まる。
今日で18日目…もう半分以上付き合っている僕も中々だとは思った。
その間にやったことは猫探しやちっちゃい事ばかりだが。
この人は課題とかやってるのだろうか。
「それで、今日は何をするんですか」
『ふふふ、喜びたまえ…今日は私と一緒にピアノコンサートを見に行こう!実質休暇だなぁ!』
「…はぁ?」
『勿論私の自腹でいいぞ!』
「そういう問題じゃないです」
なんでいきなりピアノなんて…それに僕以外にも誘う人いただろうに。
『………えっと…こういうの、見に行くの憧れてたんだ、誘うのも君ぐらいしかいなくて…無理にとは言わないよ」
断ったらめちゃくちゃしょげるんだろうな………。
まぁ音楽は嫌いではない。
聞くだけならいいだろう、仕方ないと承諾した。
『ぇ…本当にいいの!じゃなくて…
まぁ、ダメだろうと助手くんは連れて行く運命だったけどな!」
女の子っぽい一面を見せたかと思いきやガハハと女子力ゼロの笑い方をする姿に若干呆れた。
………
結構、大きいホールだ。
その中の舞台でピアニストは緩やかにしかし強弱があるように奏でる。
心を引き込むような演奏だ。
流れている曲はドビュッシーの『月の光』だ。
…彼女がこういうのが好きなのは意外だな。
そう思い彼女の顔を僕は見た。
今までで見た事ない顔をしていた。
可憐な少女の顔、魅入ってしまう程。
『…一度、此処に来たかったんだ。
この街で1番好きな場所なんだ、子供の頃…此処から聞こえる音楽を聞くのが好きだった。
もっとお金があったら、いい席を取りたかったな』
「…そうですか」
『でも今日は最高の日だ。
君と来れたし、好きな曲も聞けた。
人生のトップ3に入るくらいだね』
なんて笑いながら言うんだから。
本当にいい日なんだろう。
僕も少し、悪くはない。
『ねえ、柳沢くん』
真っ直ぐ、見つめてくる。
『私と一緒に、本当に探偵をやらないか』
明るい濁りの無い瞳が僕をうつしていた。
僕は驚いてしまった。
でも僕はすぐ首を振った。
「…僕は…まだ助手だし。
貴方や叔父さんみたいにかっこいい探偵なんかにはなれない」
『でも頭はいいじゃないか、探偵はココで推理するんだから、君は1番向いてる気がする、いや向いてるんだ。
私なんかよりね。
いつも見てるからわかるよ。
探偵…好きなんだろう、だから…いつも付き合ってくれるんだろう。
あの叔父さんや、小説に出てくるみたいな探偵が好きなもの同士だ。大丈夫、私がいるから、私も君がいてくれたからこれを続けて来れたんだ。君がこれを馬鹿にする事は無かったから』
『私からの、水里 桜からの本気のお願いだ』
いつでも拒絶する事は出来た。
断ることも出来た。
それが出来なかったのは、貴方と2人でいるのが、なんだかんだ楽しかったからなのかもしれない。
でも、
「…ごめんなさい、僕には…無理だ」
僕は断った。断ってしまった。
沈黙が流れた。
寂しく笑いながら君は言った。
『………………………』
『そっか、なら仕方ないね』
演奏が終わる。
拍手の中、2人の少年少女は動かなかった。
コンサートが終わり、夕日に照らされながら僕らは帰る。
『今日は本当に楽しかったよ。
また明日も会おう、助手くん』
いつものように別れていった。
でも、笑顔で寂しくも、こちらを見ていたのだった。
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