時間が、少しだけ経ちました。
形式的な「社会復帰」の手続きばかりをこなしていました。
仮住まいで書類に向き合ってる間は。何故かずっと、曇り空でした。
償う宛はない。叫ぶ声もない。
実名を出した取材は、手記は、すぐに埋もれてしまうものだろう。
嘆くでもない、恨むでもない、
淡々と、自分という存在を知らせただけの文章は、さぞつまらなかっただろう。
それでも、私は。名乗った。本当の名前を。
善意でも悪意でも、そのどちらでもいい。
不公平を。一度だけ、是正することができた。それでよかったんです。
そして、残った私は、やっぱりただのヒトのまま。
名を呼ばれない、哀れな女。最早、名さえも独り歩きして私を置いていった。
息をしていた。生き続けていた。死ぬ理由が、なかったから。
心を割くべきものがない生は、退屈でした。
ある日。傘を持って、外に出ようと思いました。
日課だった散歩を、長いことしていなかったものですから。
曇り空は。少し、薄暗く染まっていました。
❀----------------
「……」
ペンを置く。自分の人生を見つめ直しても、面白いことはあまりない。
それよりも、ここに来てからの方がよっぽど楽しいことが起きている。
閉鎖空間で。生きることすらもままならないというのに。
人が死んでいるのに、歓談を楽しんで、忘れようとしている。
いつか、親しい人が亡くなってしまったときは。
私は、そうしてしまうのだろうか。
恋人を殺めた女は。親しい人を悼む資格があるのだろうか。
分からない。
分からない、けど。
やりたいことだから、書き留めておこうと思う。