私は当時1〇歳の少女、

時間が、少しだけ経ちました。

形式的な「社会復帰」の手続きばかりをこなしていました。

仮住まいで書類に向き合ってる間は。何故かずっと、曇り空でした。

償う宛はない。叫ぶ声もない。

実名を出した取材は、手記は、すぐに埋もれてしまうものだろう。

嘆くでもない、恨むでもない、

淡々と、自分という存在を知らせただけの文章は、さぞつまらなかっただろう。

それでも、私は。名乗った。本当の名前を。

善意でも悪意でも、そのどちらでもいい。

不公平を。一度だけ、是正することができた。それでよかったんです。

そして、残った私は、やっぱりただのヒトのまま。

名を呼ばれない、哀れな女。最早、名さえも独り歩きして私を置いていった。

息をしていた。生き続けていた。死ぬ理由が、なかったから。

心を割くべきものがない生は、退屈でした。

ある日。傘を持って、外に出ようと思いました。

日課だった散歩を、長いことしていなかったものですから。

曇り空は。少し、薄暗く染まっていました。

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「……」

ペンを置く。自分の人生を見つめ直しても、面白いことはあまりない。

それよりも、ここに来てからの方がよっぽど楽しいことが起きている。

閉鎖空間で。生きることすらもままならないというのに。

人が死んでいるのに、歓談を楽しんで、忘れようとしている。

いつか、親しい人が亡くなってしまったときは。

私は、そうしてしまうのだろうか。

恋人を殺めた女は。親しい人を悼む資格があるのだろうか。

分からない。

分からない、けど。

やりたいことだから、書き留めておこうと思う。