▶︎雑多記録 閲覧可能

──玉子が割れる音がした。

殻は不必要となり捨てられる。

中身の黒々とした濁った目がじいっと、まんまるにこちらを見つめていた。

それは恨むようだった。

卵は巣からおっこちた。

そのままぱかんとふたつに割れる。

割れなくても川流れ。

翼は一つも届きはしない。

川魚にせっつかれるか。

濁流の中の岩にぶつかるか。

どちらにせよ割れてしまって。

盆に帰らず。

ただ、目だけが発達している。

胎芽に程近い。

いつかあなたの内臓になるもの。

いつかあなたの舌になるもの。

いつかあなたの管になるもの。

いまあなたの心臓そのもの。

それらは透き通っていて、それだと言うことはわからない。

だらりととろけて形をなしているが。

とろけているからなしていない。

それは神秘的だった。

それはグロテスクだった。

皮膚がなく中身が剥き出しとなっている。

当然。

──だって殻は割られている。

もう誰にも守れない。

もうだれにも温められない。

もうだれにも──

──天使番号208番。

──またあなたですか。

──今回は…何、

──また魂を奈落へ落としましたか。

──これで何度目とお思いですか?

──…

──何度も拒否されているでしょう。

──ああ、そういえば…

──近いうちに人の再編が行われますから。

──あなたはそちらに回されるでしょう。

──大丈夫。主もお喜びになられます。

──あなたにぴったりの仕事です。

──“人間に奉仕することが天使の存在意義”だと、当羽もあなたも理解しているわけです。

──次の仕事は…

──苦難ある人間の元に直接向かい、直接助けることのできる仕事ですよ。

──有意義なものです。

──励むように。

【対話記録:2xxx/09/05】

おめでとうございます!

あなた方には近く、卵が授けられる事でしょう。

良き日常を育み。

良き仲を育み。

よく励み、よく過ごす。

神はあなた方の働きを見ておりました。

近いうち、天使が参ります。

どうそ、お待ちください。

【役場に提出済みの文書】

──翼の肥大化が行われる。

最適化されている。

──下腹部に機能の発生が認められる。

最適化されている。

──胸部の肥大化が認められる。

最適化されている。

分化されている。

──羽の色は、まだ、白い。