『――ああ!!どうして!どうして!』
『この人は、まだ生きれます!まだ生きれたはずなのに!』
『どうして!殺してしまったのですか、神父様!』
さて、さて。
懇願をする者が、一人。
今日は救いを希望される信者様の巡回でございましたが。
買い物から戻ってきたのでしょう。
信者様が食べるつもりであっただろうバスケットは床にひっくり返り。
かたや滲む布を。
かたや信者様の手を。
しっかりと握りながら、泣きはらしてこちらを向いてくるのでございます。
「――ただ殺したのではございません」
「生前から、この方はもう生きたくないと嘆いておりました」
「日に日に弱っていく己の体を、見たくないと」
「もう、苦しまずに死にたいと」
「……ですので、私は」
「このお方に、救いをもたらしただけでございます」
「大義を、成しただけでございます」
『――よくも、そんな綺麗事を……!』
ふむ。
理解が出来ないのでしょう。
苦しみに悶える、信者様の気持ちも。
冬の神のみ教えも。
仕方ありません。日常茶飯事ですから。
――ですから、こうして。
背中に刺されることなど、容易い事ですから。
『――あ、あ、ッ』
「……どうぞ、最後まで。
私を憎みながら、生を謳歌してくださいませ」
「……ですが」
「この安らかに眠るこの方のお姿を、忘れぬようには、してくださいませ」
そう、言葉をかけてこの家を去りましょう。
私の役目は終わりましたから。
「……しかし、癒しの奇跡があろうとも。
刺されるのは痛いですね」
致命傷にならないように気を付けながら刺されるのも。
なかなか至難の業でございます。
中には深くなりすぎて痕が残ってしまう事もありますが、
これもまた、神父の務めでございます。
――ですので、しばらくは。
この異世界でチョコレートパフェでも食べましょう。
争いが起きえてない世界は、やはり素晴らしいですから。
*-*-*
さて。
工藤様を無事に救えましたが、あの王、という者は犯人を捜していたようで。
かたき討ちなど、無益でしかないというのに。
――でも、よいのです。
そのうち、きっと私がした事だと、いずれ分かる事でしょうから。
その為には、まずは。
あの者を、死の冒涜者を。嘘で語る者を。
真の意味で、救わなければなりません、
――そうでしょう?
冬の神よ。