押し入れの中を見せてもらった。写真や絵でしか見たことのない植物の鉢植えが、ぎっしりと詰められている。
彼等はどこかで苗を手に入れ、そこから増やして栽培をしているらしい。
誰かに売っているのか、と聞くと否定が返って来る。
勿体ないな、と思った。
葉巻だと素人目でも手作りである事が分かる。
その道のプロなら既製品のように作れるのだろうが、一介の大学生達にそれは不可能だ。
代替え案として、煙管を提案した。
刻めば煙草葉との区別は……素人であればつきにくい。本職にはバレるだろうけれど、見つからなければ良い。
どんな犯罪も、見つからなければ完全犯罪となるのだから。
同じ大学の人間に少しずつ売り始めた。
まずは喫煙所でこちらに興味を持った人間に。
それから、歴史や文化が好きな人間に向けて。
儲けた金で小さなアパートを借りた。
そこでは押し入れ、居間、廊下、台所、浴室……全てがプラントとなった。
自分に栽培の適性があるとは思わなかった。
手をかけただけ質が良くなるし、勉強よりずっとやり甲斐があった。
顧客の情報は紙にもデータにも残さない。覚え切れる分だけ相手にする。
人の顔を覚えることだけは昔から得意だったので、人と売った葉の量を結びつけるだけの簡単な暗記だった。
自分に密売の適性があるとは思わなかった。
商売よりも行動指針が明確で分かり易い。人目に付かないように、足が付かないように、利益を出す。
何ら制限のない商売であったら、すぐに頓挫していただろう。
密売であるからこそ、するべきことが分かるというだけ。
いつのまにか、上級生達に代わって生産と販売を仕切るようになっていた。
彼等もそれを良しとしていたし、何より彼等は管理を煩わしく思う人種であったから。
戻れないな、とは思う。
やってしまったなあ、とも思う。
思うだけだ。