岐路

夢って、あるか。

これは在る方がいいモンだから、あるならいい。

俺も一応ある。「好きに生きる」っつうのが。いい夢、か。なンかむず痒い。

今までままならねェ人生をおくってきた。

動かない身体、酸素を取り込むのも一苦労な肺、弱った臓腑。

一日先、一秒先を生き延びることに必死になっていた。

病状が少し軽くなってもこれは変わらなかった。

冒険映画が好きだった。旅行小説が好きだった。登場人物たちが自由に広い世界を駆けまわるのを見て、俺の心も狭苦しい病室の外に行くことができた気がした。

俺は好きなように生きたかった。俺の人生の道筋を、俺で自由に決めたかった。

このクソッタレな病から解き放たれて、俺の意思、俺の自由、俺の権利で。

それが、俺の夢。

けれども、夢は叶わないから夢なのかもしれない。

此処に閉じ込められてから、だいたい3、4日は経ったと思う。

常用薬を飲むのをこんなにサボるハメになったのは初めてかもしれねェ。

咳で上手く眠れねェ。吐く血の量が確実に増えた。

『快晴』まであと3日らしい。それまで踏ん張れるンだろうか。まだ死にたくねェ。

俺は、俺の意思で選びたい。俺の生き方を。誰かの掌の上かもしれねェけど、それでも。

……あいつの夢は、叶うといいと思ってる。そう祈ってる。確かに。心から。

どうか選び取ってほしい。生き延びて、このクソッタレホテルから出て、それで。

……なンてのは、きっと傲慢すぎるんだろうな。ナイショここだけの話にしておく。

護身で買ったナイフだが、綺麗なままにしておくことにする。俺は俺らしく誇れる俺でありたい。

俺の生き死に様は、俺が選ぶんだ。

岐路:分かれ道。将来が決まる重大な状態。