神無月

あたしが物心の付かない赤ん坊だった頃、

甘露という名をした姉が居たのだそうです。

元気一杯を絵に描いた様な愛らしい娘だったそう。

でも、九つの頃、庭のお池に身投げして亡くなられたのだとか。

くしゃくしゃ皺まみれの遺書には、お父様への非難の言葉が書き連ねてあったそう。

姉だった甘露って子、無口なあたしと似ても似つかない子ようなお転婆だったらしい。

あたしって後釜なんだそう。

如何せん、生菓子は足が早くて。

すぐに傷んでしまいました。

──あれ、じゃあ、元のあたし、どこ行っちゃったんだろ?

今に思えば、ずうっと間違いだらけでした。

お人形をやれていたら良かったのかしら。

無機質な鈍色だったら良かった?

早く気付いときゃ良かったのね。

現実は陸の上、夢はあぶく。