【生死の瀬戸際、裏切りの声】

 マクベスに言われたから、

 誰かを襲うのはやめて警戒にした。

 そしたら、誰かに襲われた。

 ソイツのこと、あたし、覚えたよ。

 結果論として、警戒して良かった。

 因果応報とは思うけれど。

 もうそれを、自分が死んで良い為の免罪符には、しない。

 しかし、困ったな。

 明日は何とか生きられるかも知れない。

 でもこのままではあたしは絶対、明後日を迎えられない。

 あと少しで、ここを出られるのかも知れない。

 けれどその“少し”が、決定的に足りないの。

 襲撃に失敗していなかったら、なぁ。

 生き残りたい。あのひとにも生き残って欲しい。

 取れる手は? 手は?

 思考する。

「…………マクベスは」

 殺さない、と宣言した。

 でも、ロビーに行けば分かる、

 貴方の資源量。

 あたしを、置いて逝かないでよ。

 

 決めていることがある、秘めていることがある。

「──なら、あたしが剣になる」

 共に生き残りたい相手がいる。

 普通に過ごしていたら、間に合わない。

 そして、貴方は他者を害さない。

 あの鏡を捨てても。

 心が正気に戻っても。

 最初から欠けていたものは、そのまんまだ。

「これでまた襲われて

 今度こそ死んだら、お笑い種だわ」

「──でもあたし、座して死を待つほど、

 運命に従順って訳でもないのよ」

 賭けに出よう、出させてくれ。

 共に生きる明日を、掴むためにも。

「…………………………」

 だから。

 運命の、女神さま。

 一度ぐらい、微笑んでよ!

  ◇

 あたしの友達が、タチヤマが死んだらしい。

 生前の約束通り、思いっきり悲しんでやろうとした。

 そしたら、誰かがアイツを蘇生させて。

──アイツの“マブ”は、嘘だと知った。

 あたしには碌に友達なんていない。

 故郷はあたしが破壊した。

 その後も同じ場所には留まらなかった。

 だからアイツの言葉と態度が、

 とてもとても嬉しかったのに!

「………………」

 裏切りやがったわね。

 オマエも殺人鬼だったのね!

 怒りが湧いたが、悲しみの方が勝っちゃった。

 さよなら。もう二度と会わないことを願うわ。

  ◇

 そんな、中で。

 とある人に、襲撃を宣言されたものだから。

 あたしの脇腹を刺したヤツだった。

「…………あたしはやっぱり、

 悪には成りきれないの、ね」

 黄昏の足音が、聞こえている。

 その先に未来がないと分かっていても。

 あたしは、一日でも長く生きる道を選ぶことにした。

 だから誰も襲わない。

 あたしは警戒する。そしてあたしを守る。

 

──あんなヤツにくれてやれる命なんて、ないわ!

 未来はない。その道に未来はない。

 分かっているから、遺書を書いた。

「希望を抱いた瞬間に

 閉ざされようとしているなんて…………」

「はは、は。何の皮肉よ」

「運命なんて、そんなものよね」

 あぁ、でも、それでも、それでも!

「──マクベス。貴方は生きて」

 貴方は。貴方だけは。

 貴方は、あたしの希望なんだから。