【あたしの“価値”は】

 身体が、重い。

 どうやら、生き延びたらしい。

 あたしを襲ったのはふたり。

 賭けに出ずに、警戒えんめいを狙って良かった。

 身体が、重い。

 この脚はもう踊れない。

 黄昏の足音が、囁いている。

 流れる放送を聞いていた。

 あたしたち、どうやらもう、ここから出られないみたいよ。

「………………そっか」

 優しさに触れて、夢を抱きました。

 間近に迫る死の気配に、抱いたそれを捨てました。

 身体が、重い。

 あたしがここで死ななかったところで、

 夢は、どうせ叶わなかったみたい。

 でもさ、それでも、刹那のうたかたでもさ。

 夢を見られて、本当に本当に、楽しかったの。

 温かい時間を、ありがとう。

 ねぇ、マクベス。あたしの王さま。

────大好きよ。

 強い親愛を向けました。

 貴方と、本当に家族だったらな。

 あたしみたいなバケモノにでも、

 貴方は“価値”をくれたの。

 夢と希望と約束を、

 生きる理由を与えてくれたの!

 こんな人生でも、“幸せだ”と思えたのは。

 貴方の存在が、あったからこそ。

 身体が、重い。

 痛くて苦しくって仕方がないわ。

 貴方に出会えて、あたしは幸せだった。

 貴方のお陰で、あたしは救われた。

 こんな場所で、あたしは死んでしまうけれど。

 いつか。もしも。

 こんなあたしでも、地獄行きのあたしでも、

 生まれ変われる日が、来たのなら。

「その時は……貴方と……

 ほんとうの…………家族、に」

 あたし、今度こそ。

 きっとちゃんと、愛されるよね。

  ◇

 あたしを狙っている奴らは、沢山いる。

 あたし、死にかけだけど。

 この命、誰かにくれてやるつもりなんてないわ。

 衰弱死なんて、カッコ悪いと思ってた。

 でも、マクベスに看取られながら死ぬのなら、

 それも悪くはない気がするの。

 だから。最後の時は。

 誰かを殺す為に買ったナイフは、

 あたしの尊厳を守る為に。

──警戒。

 殺される前に、力尽きて終わるのよ。

 人殺しのあたしの、最後の矜持だ。

 殺されてなんて、やらないんだから。

 あたしの“価値”は、あたしが守る!

 身体が重い。黄昏の足音は、もうすぐそこに。

 視界が滲む。感覚が消えていく。

 隣に居てくれる貴方だけを、感じる。

──また ね  マクベ ス。

 地獄  で 待っ て   る。