あの日は、お父さんとお母さんと一緒に、遊園地に出かけていました。
いつの間にか私は迷子になってしまって、泣きそうになったことを覚えています。
お父さん、お母さん、と呼ぼうとしたその時、知らないおじさんに声をかけられたのです。
迷子かい、一緒にお父さんとお母さんを探そうか。
そう言われて私は頷きました。
ひとりぼっちが怖かったのです。
そうして。
そうして、言うのも嫌なくらいの、ことがあって。
それから、私は死んでしまった、らしいのです。
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イヴニングフラワードール。
別名、marry。
愛玩用の屋敷妖精。
材料は、死んだ子供の肉と骨と、魂。
作成時は、セーフティの術式を付与するよう義務付けられている。
頭の中に、偽物の忠誠心を植え付けて。
人間を傷つけないようにと躾けられた。
愛玩用の、お人形。
それが、marryと呼ばれる存在だった。
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本当は知っていました。
自分がどうしようもなく化け物だって。
だって、死体から作られた存在だったから。
それなのに、人間みたいに振る舞うのは申し訳が無くて。
黙っていれば、ただの道具みたいだったから。
その方がいいと、思っていたのです。
だけど、今はもう。
自分で選んで、自分で決めて。
セーフティすら、壊れてしまって。
もう、どこにも帰れないけれど。
それでも、なんだか。
とても、幸せなんです。