「時空の狭間、無の領域」
「そうした空間の歪みから生まれ落ちた、人間の青年のかたちをした存在」
「それが君だ。だから__」
「君の帰る場所は、最初からない」
「君のことを知る人物は、最初からいない」
「エピソード記憶が一切無いのも、当然と言える」
「あと、これがまた興味深い話でね」
「こういった成り立ち故に、”君と同じもの”がもう一体、あるいは複数生まれ落ちる可能性があるんだ」
「君と同じ肉体と精神を持つ存在が、どこか別の時空に降り立ち、失った記憶を探すために動く」
「そう、君と同じようにね」
「……」
「ははは、随分と深刻そうな顔をするじゃないか。いちいち悩む必要は無いさ」
「便宜上、”君”とは呼んだが、いま私の目の前にいる君とは全く別の個体ということになるし」
「これは、もしもの話でしかないから」