私は結局、攫われたままもう戻れないらしい。
親しい人だけじゃなくて自分が攫われる日が来るんじゃないか、とは思っていた。
だって、そうじゃないと不公平だ。
周りばかりに死をもたらして、自分は平気でいるって。
自ら死ぬつもりがなかったのは。
いつかのその時を待っていただけだ。
なんて。きっと、誰にも言わないままでいる。
そんなこと言わなくても、よくなったから。こんな予感され、素敵に飾られたのだから。
私は雨に攫われたのではない。
人に。死の淵から華麗に奪い返されて、やさしいゆりかごへ。
本当に、自分勝手だ。
私の意志ではない死に依って、理不尽な罰に対して何とも思わないなんて。
でもその果てで、今こうして、一番大切なものとして誰かの隣で眠れているのだから。
もしかしたら。もしかしたら、私の生は、意味があったのかもしれないって、思える。
想像してみた。
もし、こんな場所ではなくて。
元居たところで、あなたと会えていたなら。
(それは……)
(絶対に、消えることのない悔いだなあ……)
おかしいやら、涙が出そうやら。
ああ、こんなにも心が動かされている。そんなのって初めてだ。
薄く、湿った瞳を開いて。
身を起こしては、眠っている彼の顔を見る。
明日も、明後日も。
何処かに落ちても、消えても、亡くなってしまったとしても。
私はあなたを覚えている。
私はあなたの隣にいる。
あなたもそうでしょう。
こっそり、そっと手の端に触れて。離して、また横になった。