死路

死神の跫音を、聞いたことはあるか。

無ェなら、いい。生きてくれ。そのまま。

おれはある

いまもきこえる

すぐそばで

手も口もずっとあかい

いきができない

音が

やさしくておそろしいあしおとが

死路(しろ):行き止まり。望みの無い状態。

……悪魔の足音を、聞いたことはあるか。声を、聞いたことはあるか。

無ェならいい。せいぜい俺を羨ましがってくれや。

俺は、ある。小さくて、猫みてェな不思議な悪魔の。

人と一緒に居ることが好きそうで、イカした角とシッポを持った悪魔の。

すばらしい将来の夢を持つ悪魔の、足音を。

一緒に歩いて、話して、聞いたんだ。

死神の跫音よりも、ずっとよかった。軽やかで、楽しそうに聞こえた。いい音だった。

そんじょそこらの奴らじゃ、一生かかっても聞けねェだろうぜ。でも俺は知ってるんだ。

俺は。

ああ、ならば、

ああ、

クソッタレなほどに、いい人生だったってことにしてやるよ。

俺の選んだ人生は、バッドエンドなんかじゃなかったと。

俺を苛み続けてきた運命に、死神に、中指を。

あともう少しだけ、『また明日』を。