机の上、血のインクで文字が綴られている。
時折ぽつぽつと、丸形に文字が滲んでいた。
アンへ
ここに戻ってきてくれてありがとう。
私を思ってくれてありがとう。
誰かに頼んだ伝言は受け取ってくれたかしら。
幸せな想い出を頼りに、あなたがここにたどり着けたら嬉しいわ。
愛しいあなたの為に、私の想いを残します。
『一緒にいられなかった』って、あなたは自分を責めるでしょう。
『間に合わなかった』って、無力感に苛まれるでしょう。
そんなことする必要はないの。
それでも私はあなたに救われているから。
あれから私、頑張ったのよ。
再びあなたに会うために。
あなたに何かを伝えるために。
私達の幸せが、何かの形になるために。
たくさんの場所を這いずって、
たくさんの人に呼び掛けて、
自分でも信じられないくらいだわ。
あなたと二人で頑張ったの。
欲しい幸せがそこに在ったから。
あなたの温もりが、いつまでも共にあったから。
だから、あなたのおかげで幸せな最期を迎えられる。
離れていても、変わることはないわ。
そう思ったら、私今、とっても穏やかな心地なのよ。
二人で過ごした時間みたいにね。
だからアンも、同じ風に思えたらいいな。
私と過ごせて幸せだったって、
私を選んで良かったって、
私に光と温もりを、届けられて良かったなって。
あなたを縛る自責の呪いを、私ならきっと解けるわよね。
あなたが選んだ私なんだから。
一人じゃないわ。あなたも、私も。
それに、迎えが来ない死者の魂は留まるのよね。
身体は寿命を迎えても、私、あなたを待つから。
天に連れて行かなくてもいい。
迷い続けてもいい。
閉じた空間、完結した空間が何度も巡って、古びて、壊れて溶けるまで。
そうしたら私達、二人でまた会えるはずよね。
また会えることを思ったら、ドキドキしてきちゃった。
これをあなたが読んでいるってことは、すぐそこにいるのよね、きっと。
大丈夫、私、待つことは得意だから。
何より、愛しいあなたの為だもの。
アン、
もう一度私を呼んで。
もう一度私を包んで。
もう一度私をあたためて。
もう一度私を守って。
もう一度私と愛し合って。
だいすきよ。
まゆこ