「入江ラララ、なんて居なかったんだよ」
「いや、俺のこっちの世界の名前でも、入れ替わったヤツの名前でもあるけどさ」
「なんせ入れ替わってるからね。親からの命名も、人間の世界では共有だ」
「親御さんは良い人だが、運だけはトンとなくて、結局自分の娘じゃないと気付かず愛情を注いでた」
「人間のラララは……まあ、運が良かったら人間の世界に帰れただろ
俺たちゃはぐれ者。存在の形から決まってる」
「俺もあちらを拠点にしてるしな。片方が居るのなら片方はってヤツだ」
「だがまあ、そこからが問題だな」
「俺があちらに……帰省かなこれ。とりま初めて行った時な」
「その時、取り込まれたら囚われるタイプの呪いに遭ったんだわ」
「あ、俺は無事ね。ほら、存在強度が無闇矢鱈に高いから
ここの他の存在も大体そんな感じだから、広がりはしても問題にならなかったんだよ」
「あれは人間相手だと、厄介だろうなぁ。なんせ郷愁だ。なんせありもしない理想郷への願いだ」
「これを真っ向から否定出来るんなら人間はここまで大きくならなかった」
「目的なんてのは、過去への未練か未来への希望で出来てるからね」
「そんなん持ったまま人間の世界になんて帰るもんじゃない……ああこれ結果論ね。攻める訳でもなんでもない」
「ンなモンに下手したら生まれつき浸ったら、本人が育つ前に蔓延られたら、それは人間だと言えるのだろうか」
「うーん入江ラララチャン、可哀想だね。役割を入れ替えられ中身を食い潰され。はて残ったのは形骸のみ」
「……さて、呪いというのはなんだろう」
「ゲームの異常みたいに解呪出来るんだろうか」
「いンや?」
「少なくともこれはもう無理だ。本人から離れてる」
「行きたいとか帰りたいとか。そんな気持ちだけで出来てる。例えウルトラ誤解としても、本人がどう思ってても、どーにもならん」
「確かに解呪テキな魔法はあるが、それは信仰とかによって塗り潰し消すものだからね
本質的な解呪には程遠い」
「そもそも認識のものなんだから、それに近い感情を無くしたらもう影響ないだろうか?」
「答えはイエス。でもそれは患部を切り取ったに過ぎない。病原菌に患部を引き渡す等価交換でしかない」
「根源はよりによって感情だもんね。それ切ったら人間なんてトレースするだけのゾンビだ」
「呪いなんて概ねは感情?
それはそう。ではこう訂正しよう」
「呪いの、影響したいと願った先は感情なんだからね
求めたのは共感か閲覧か、はたまた同化か」
「知ったこっちゃあありません」
「まあつまり、俺の入れ替わり先に想定されるのは呪いの媒体の肉細工だ」
「フゥ。誰だいこんな酷いことを言ったのは。ねぇ?」
「最初に産まれたラララは既に死んでて、残っているのは呪いに影響され尽くしたモノ」
「……ああでも」
「何かの間違いで」
「その呪いの操り人形でしかない思考から、新しい選択が出来たのなら」
「それを許される場所や、それをさせる人や、運命があったのなら」
「きっと、それは新しい呪いとして、入江ラララを名乗って良いんだろうな」
「……俺は何も知らないけどね。原典と違って、俺はそこまで目が良くないもので」
「精々祈るさ。我がキョーダイに救いあらんことを」
___とある裏世界の事務所。チェンジリングされた怪奇より
___もしくは、無貌の職員