氷雨の降り注ぐ夜のことでした。
二度目は体感早くに事を済ませました。
少し慣れた気すらしたのも、嫌な心地。
もう、居らんなかった。
恨めしいような目付きが怖かった。
だって、甚だ奇妙な話ではありませんか。
あたし、愛されてる筈なのに。皆に好かれる筈なのに。
目に付いた番傘握り締め、草鞋を履いた足で逃避行に駆け出しました。
夜の闇は酷く冷たくて、指先から悴んで感覚がわからなくなります。
これってやっぱり夢なんでしょう。全部、おかしいんだもの。
そうだ。夢から醒めて王子様を探しにいきましょう。
あたしを可愛いだけの女に戻してくれる王子様を。
終にあぶくになったって構いません。
隧道は間近。
沢遊びが好きでした。
沢に揺蕩えば海へ続くと聞きます。
未だ見たことのない海を臨んでみたい。
潮風の薫る白い街を棲家にしてみたい。
汽車に揺られて遠くまで行ってみたい。
溺れるような恋をして、嘘のあたしを忘れたかった。
未だ見ぬあなたと幸いになりたい。
愛を知りたい。