為すすべもなく、建物は崩壊していく。
それは衝撃を受けて壊れるというよりも溶解して雨と成っていくように感じた。
雨で溶ける者を見ると、安堵したような表情を浮かべている。
痛みは伴わないように見える。剣や槍のような痛みや、飢えのような永久の苦痛を感じないのであれば良い。
疵や倒壊を見る度おまえが徐々に近づいてくる気配がする。
抱擁されているような感覚だ。身体は冷たいはずなのに、何故かぬくもりを感じ取れる。
やっとわかった。
おまえは先にいるのだな。
だが、もう少し待ってくれないか。ガロッホよ。
おれはまだ約束を果たせていないのだ。
ある少女と『最期まで生きろ』と誓った。
無論、おまえとの接点は無いが……彼女は良い少女だ。
ルーラッハとも馬が合うだろう。その少女も迎えて、次は良い家族になろう。
建物が朽ち果て、おれが雨と一体になる、その時まで待ってくれ。