あれは、今日ぐらいの雨の日のことでした。
少し憂鬱に思いながらも、いつも通り傘をさして、
軽い足取りで待ち合わせ場所に向かっていました。
だってその日は。初めてのデートの日、でしたから。
雨なんか気にならないように、映画を見て、
美味しいご飯を食べて、のんびりと過ごそう、と言われて。
ああ、こういうところが好きなのだと思って。
帰り道、人目に付かないところで、あの人が、
私の目の前で、頭から血を流して倒れていました。
横には車。開け放たれたまま、そこにある。
降りしきる雨に、傘をさすのも忘れてずぶぬれになって。
突き飛ばした。それだけ、それだけだった。
そうしなかったらどうなっていたか。考えたくもない、けど。
そっと。……家族に電話をかけました。
酷く、沈痛な──けれど優しい声を、交わし合いました。