1日目

指導者候補を模索している。ワタシが把握したのは以下の16名。

5 ユウガオ - ワタシが自己紹介を提案したのち、ワタシのように人の名前を反芻していた一人。初印象は他人に穏やかに接しており、親睦を深めることに賛成的な口ぶりの温厚な人物。しいていえば、積極性に欠けて受動的に見えた。だが一応、ワタシがロビーにいない間の自己紹介の催促と名前の照合を頼んだ。1日で1人ずつのパーソナリティを把握するのは1人では不可能だからだ。だから、聞き手を増やし共有しあうことで効率化を測る。7日間、65名が閉鎖空間での生活を営んでいくなら、統率は必要不可欠。まだ軽く話した程度なので分からないが、指導者にするのであれば命令を下すのは難しく、ワタシが強硬して代理命令を下すしかないような気もさえする。あと特記すべきは両手がなにかで繋がれていること。ロープには見えないし誘拐犯の仕業であればワタシやそれ以外にも同じように施したはず。よって、個人的な事情と伺える。知らなければ盛りようがないが、拘束者というシンボルは贖いのポーズとして賛同されやすくもある。しかし、拘束にしてはゆるそうだから弱いか……

10 花屋 - プールで知った相手。職業名とは別に、ハルという名前を知ることが出来た。花屋を営んでいるという。初印象は素朴。素朴というには角が気になるが、外見上の話だ。普通に受け答えをするし、発言に棘を感じるわけでもない。指導者にするならば、エプロン姿であるのはシンボルとして弱いかもしれない。角が片側しかない、という部分でなにか脚色できないだろうか。

12 悪魔オモロス - プールで知った。名前通りに受け取るのなら悪魔であるらしい。願いを叶えることを生業としているらしい。悪魔が願いを叶えるといえば非現実的のように聞こえるが、当選した政治家が公約を実行すると言い換えれば現代の話になってくる。もしかしたら悪魔とはそういう暗喩なのかもしれない。花屋と違い、角が2本生えている。これらはシンボルとしてもポーズとしても有効に思える。尤も、悪魔を指導者にすれば、一見魔女集会のように見えると批判が飛んでくるかもしれないし、当のオモロスが願いを叶えることに積極的であるのなら、そのような公約を掲げなければならないかもしれない。この建物はインフラもあまり整っていなさそうのでそれは無茶だ。優先度低。

13 スファレ - ロビーにいた、ワタシとさして背丈の変わらない人物。あれは修道服であっているのだろうか?だとすれば、宗教的タブーを踏まないように伺っておかねばならない。伺った感じ、盲目であるので介助が必須と感じた。指導者にするよりも、この人を介助して動けるような仕組みを整えれば好印象を稼げるのではないだろうか。そういう意味で、指導者じゃないほうが利用できると踏んでいる。初印象はワタシがうるさくしたのもあるが、臆病で自罰的な言動をしていた。上に立つ、という責任をワタシが軽減したとて精神負荷が発生しそうだ。よってあまり線はない。

14 ローゼン・ハイデン - ワタシの次に自己紹介をしてくれたおかげで場を繋いでくれた人物。このような人員がいるのは有益であるし、装っているワタシと同じようなノリを感じる。もっとも、小腹が空いたからとその場をすぐ去ったので初印象は薄い。要接触。

19 ロィナ・アルレット - 途中でロビーにやってきた少女。立場がある、ということに何か共感を示していた気がする。まだ名前しか分かっていない。建物に食堂とバンケットがあることを教えてくれたので、確認をしたいとは思った。しいていえばロビーに留まらずに一時的な滞在のみに留めているのだろうか?

20 山野井 亜希奈 - ロビーにいた人物。おそらく学生。ワタシだからかもしれないが、制服がなぜか古臭く感じる。いや、頑ななオールド志向という線はあるが今の時代で先鋭さを折衷していないというか、若そうなのに旧時代のフォーマット化のような堅苦しさを感じた。スマホという言葉を耳にしたので逆行先進国ではなさそうではある。あまり口数は多くなかったような気がしたが、家族が心配しているという口ぶりからごく普通の感性であると考えられる。そして、ワタシの最悪な予想が当たっていれば、そもそもここに集められた人物の年代は全員一致するわけではないという可能性がある。その場合、時代によって迎合されてきた思想は変わってくるのだから、統率が非常に面倒だ。

21 葬儀屋さん - プールで知った。職業名であるのは、ここに来る前に最後にそう呼ばれたから……らしい。片翼だけを縫合するセンスは分からないが、機能美を追求しないスタンスは個人的には好きだ。それに片翼だけというのは、天使という伝説存在の血を引いているからといった脚色が出来て、なおかつ悪魔と違い天使というのは信仰される存在だから迎合しやすい。指導者のシンボルにはいいと思う。懸念が強いのは、彼を鵜呑みにするなら葬儀屋と書かれていること。来る前にそう呼ばれていたということはおそらく仕事をしたのであり、ワタシ自身にも葬儀を執り行うような役割は上に立つことはできない気がしている。後始末を行う裏舞台の人間と認識しているからだ。だが、逆に死生観を聞き出せればそういう形で全員に説教してくれるかもしれない。そういう意味では祀り上げる1人にしても悪くはないかもしれない。

23 猫 です - ロビーにいた、獣耳のある人物。やはりあの耳になると音に弱くなるのだろうか?だとすると声量にも気をつけなければならないな。名前がないので猫様と呼ぶかどうか悩んでいる。初印象も人間化した猫。

26 鷹宮 龍一 - ロビーにいた、病人らしき人物。あのときは保護猫を家で多頭飼いしているということしか分からなかった。初印象は対応は丁寧なように思えた。

34 アルカンシエル - 初印象は独特な価値観を持った人物。雨粒ちゃんとは、言葉の順番から察するに他人への呼び方であろう。思想家であるのなら、価値観を理解したうえで今の状況と理念を分別させねばならない。あの時365日周期が共通点であると言ったように、他人との接触の際好印象を得るためには共通項を見出さねばならない。共通項があれば、互いへの共感と親近感を得て、統率が捗りやすくなる。ともかく、全員の共通項を見つけて喧伝することも視野に入れるべきだろう。

37 綾川 遥希 - 白衣を着た人物。静かにしてほしいという要求から、人の目を憚るタイプなのではないのだろうか?空気が読めそうだ。

39 夜草織 - 一緒にプールに行った人物。私が不用意な発言で混乱を起こしてしまった。一体なにがタブーだったのだろうと自己紹介時あたりのことを思い出して、ミコかなんだかと言っていた気がする。村という規模に住んでいることを考えると、もしかして……「贖罪の儀」の方だったのか?儀式に怯えている?

41 スベリ - プールで知った。ローラーシューズを扱うというのは使用人にしては面白いと思った。話した限り、性分が使用人な気がする。指導者には無理かも。

50 ジェグ - 誕生日という概念を知らないような口ぶりの人物。他人をガクシャサマっぽいと呼んだりと、教養を得られなかった貧困層の可能性がある。ワタシもヘススに教えたときは苦労したので、数日で指導者にするのは無理だろう。

63 ススグ - 最初はワタシの声をうるさそうにしていたが、同調的に流れで自己紹介していそうだった。こういう流されざるおえない人も必要だ。浮動票として利用したいし、賛同者として取りこめられれば都合がいい。

65人中16人の照合で1日かかった。半数すらほど遠い。閉鎖空間でパニックを起こす懸念を踏まえると、早く指導者に足る人物を見つけなければならない。