———何も起きない訳が無かった。
最悪の状況だ。
資源目当てに加害を行う人たちが多すぎる。
そこまで切羽詰まっていたのか。
或いは元からそういう事に躊躇がない連中が多かったのか。
事件は起きてしまったのだ。それも数多く。
僕には殆ど資源は無い。
狙われたらどうする事も出来ないだろう。
いやしかしこんな所でくたばる訳には行かない。
『marry』という子との依頼もある。
出口は…今の所存在しない。
中庭の扉が開けば良いが、外に出た所で『雨』が降っている。
そもそも外に出て無事に帰れるのか?何処かもわからない場所で野垂れ死ぬ方が先かもしれない。
悪い予測しか出来ない。
探偵の勘はよく当たる。
『担当者』やこの場所については未だ謎が多い。襲撃者に気をつけながら行動を行おう。
…一番よくない事を思い付いてしまうのも僕の悪い癖なのだから。
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あの日のカレンダーが見える。
20××年の12月21日。
今日は中学校の二学期の終業式だ。
校長先生の長くくだらない話も終わり、教室は帰宅ムードに包まれていた。
『助手くん!いつまで荷物を出し入れしてるんだ!早く行くぞ!』
…桃色の髪を靡かせた彼女が教室廊下側の窓からこちらに元気に顔を覗かせていた。
「先輩…なんで1年の階に来てるんですか…」
僕は困惑で少し傾いたメガネをなおした。
『君は私の助手だからだ。そんな理由じゃダメかな?』
「ダメですね、普通に迷惑です」
本当に。
『成る程…じゃあこう言おう、君は我が探偵倶楽部のメンバーだからだ!』
「貴方が無理矢理入れただけですよね…!?」
無茶苦茶言うよこの人は。
『とにかく今日から冬休み!私と部のみんなはとても暇になることはなく、街や困っている人を助けねばならないのだ』
「そう言って、夏休みは暑すぎてほぼ活動してなかったじゃないですか、今回も寒すぎて何もしないとかありそうで…」
…さっき言った彼女の探偵倶楽部は壇ノ坂中学校で設立された非公認倶楽部である。
実際の仕事は、落とし物拾いや盗まれた消しゴム探しなど、しょぼい内容ばかりだ。
街では周りの人に困ってる事がないか聞いて人助けしたりする。
探偵と言えるかはわからない…。
なんでそんな倶楽部に僕が巻き込まれたのか、その理由は。
『君のおじいちゃん、『探偵』なんだろう〜頼むよ!何か仕事分けてくださいとか言ってきてよ〜』
この人は『探偵』に憧れ、成りたいと思っている。
僕とは真逆の存在なのだ。
倶楽部の皆は探偵という”設定”なのだが、僕だけは助手。
後輩だからっていうのもあるけど、僕自身がなりたくないというのもある。
だって叔父や推理小説に出てくるかっこいい探偵たちがいるのに。
こんな僕がなるなんて…おこがましい。
「…今日はダメだ。そのいつも僕の面倒を見てくれる叔父さんの為に買い出しに行かなきゃ」
あの子の制止を振り切り、僕は廊下を走った。
『じゃあ明日だ!明日も無理ならその次の明日ね!』
…僕に休みは無いのだろうか。