停電の後、パニックになった。
怪我人、資源の喪失が起こったから。
みんなが良い人ならこんなことにはならない。つまり、少なからずここには悪い人がいるということ。
……ううん、こんな環境だから性根から悪い人じゃないのかもしれないけど。
怖くて震えていると、同じメイドのダリアさんが撫でてくれた。
温かくて、嬉しくて、心地よかった。
あのほんのりと香る煙草の匂いと甘い香りが混ざった匂いを良いなと思った。
その後、食堂のみんなで色々お話しして、なんでみんながこんなところに閉じ込められているのか、とか色々考えて……怖くなった。
それから個室の話になって、安全だけど一人は寂しいなんて言っていたら、ダリアさんが一緒に寝てくれるという話になった。
嬉しかった。とてもとっても嬉しかった。
誰かと寝るのはすごく心地良かった。
寝る時に感じたダリアさんの手の温もりはずっと忘れられないんだろうなって思った。
……最後に誰かと寝たのはいつだっけ。
お母さんからは私を立派なメイドにするためと言われて、3歳の時から一人で寝かせられていたから、もしかしたらそのとき以来かもしれない。
……だからすごく嬉しかったんだろうな。
安心して眠れたんだろうな。
目覚めは良かったけれど、一つ夢を見た。
元の世界の夢だ。
先輩方三人と話している夢。
私のことを『紅ちゃん』と呼んでくれる先輩、『晴ちゃん』と呼んでくれる先輩、『スベリ』と呼ぶ先輩がいた。
『スベリ』と呼んでくる先輩はきっと、私のことを嫌っていたのだろうけれど、私は彼女のことを一番慕っていた。
気高くて、ご主人様にも思うところがあればビシッと言い切るところが格好良かった。
……あの先輩が私のことを、嫌っていた?
私は、いつ、そう思ったのだろう?
思い出せない……。