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>シダレ
知らなくて 良い
言うつもりも 無かった
君に 刃を 滑らせた事
獣のように 目を光らせた事 も
「これから ?」
まんまる ケーキじゃないのに
まんまる ケーキを 切り分けるように
子供の 想像出来ない 死 が
この 皿にも
「ケーキ たべたーい」
「おそらから ふってくる んだって」
そればかり
出られなくなる 前から
「恨みの心当たりは沢山」
「恨まれる謂れは無いけど」
愉快犯も居たかも知れない。
過ぎた話だ。もう、どうでもいい。
馬鹿な人ばかりだとは思うけどさ。
「あなたのやめて欲しいって言葉に、私は応じなかったのに」
「……呼名を付けたくらいだよ。思い付きのさ」
「そんな大事に抱えられるなんて思わなかった」
>バースデイ
両腕も無ければ、傷一つ無い子供。
幼い君が、暗闇を駆け回る日々を、
きっと、これは、知らないままでいる。
「バースデイは、これからどうしたい?」
「昨日の内に聴いても良かったけど、」
「こんな風になるなら、今日で正解」
平等に死は切り分けて贈られる。
もう、余計な喧嘩をしなくてもいい。
「くっ ヒトの心とは、かくも移ろいやすく」
得ようとしていたわけではないが。信心とかを。
これは信徒になったつもりもない。
他者からどう見えているかはわからないし、制御できるものでもないが。
どう転んでも、結局。
テン・フカセツという被造物の救いは、死の先には無いからだ。
「……恨み。何か心当たりでも?」
この少女に、恨みを持つような人間がそういるとは思えない。
どちらかといえば、愉快犯ではないかとは思うが……。
「わたしがですか? なんで?」
シーツを包帯状に切りつつ、心底不思議そうに聞き返す。
そんなこと、考えたこともないと言いたげに。
「シダレさんは、わたしに名前をつけてくださったじゃないですか」
「とってもうれしかった」
……ナデシコの花を実際に見ることは、どうやらかないそうもないけど。
「わたしだけの、大切な名前を付けてくださった大切な方に」
「疎ましいなんて、あるわけないじゃないですか」
>シダレ
酷く 疲れて 眠たかったから
聞いてはいなかった
何せ ずっと 毎日
暗闇の中を走り回ってきたんだから
「はなし ?」
なにー って 寄ってくる
まあ 結局 全員死ぬから
大丈夫 全て ゴミ箱の中になる
「───……、………」
「そう、です」
そうだ。綺麗事だ。綺麗事でいい。
『それで人が救えるなら』。
冷徹な現実主義の真実よりも、
誰かを0.1%でも救える可能性のある綺麗事の方がいい。
「……そうですよ……」
ああ、ソファに伏せていてよかった。
濡れた目元は、天使が見せるべきものではないから。
ねこねこー ねこねこー
なんどか してから ちゃんと てんしさまに もどりました
みなみなー みなみなー
眠りに沈む前の一方的な口約束だったから、
君は聴いてすら居なかったかも知れないね。
「今日を生きて、君とお話がしたかったんだ」
「バースデイが思ってること、私は何も知らないから」
不運にも此処で死んでしまうから。結局。
悪い子の証明にはなっちゃうけど。
「奪っちゃったかも、ミナミナの座を」
天使は天使であり、猫もどきは猫もどきである。
ここで信じられているのは、天使である。それは変わらない。
それはそれとして、ねこねこー。
「……」
ねこさんが つづけたので
まよってから ねこさんにも おいのり しました
みなみなー ねこねこー?
「物凄く恨みを買っちゃったみたいで」
「それか、都合の良い人間だと思われたのかも」
昨日今日で付いた傷じゃない。
毎日少しずつ増えて、気が付けばこうだった。
「止血は、別にいいですけど……」
「ナデシコさんは、私が疎ましくはないの?」
「それは、いつか、どこかの誰かの救いになりましょうとも!」
途切れた言葉を継ぐ。
綺麗事を吐く事に躊躇はない。
だってこれの思考回路には綺麗事しかないんだから。
いつも、そうであったらいい、そんな楽観的な、希望的観測ばかり。
だから、死にゆくものだけでなく、遺されたものにも救いがありますように。
心から、そう願っています。
「ん し いくないからねー」
死ななかった 悪い子じゃなかったんだね ?
運が良かった 君の証明だったよね ?
殺したってしょうがないって。
「…… ……」
天使 の方を一瞥 した
大変そうで かわいそうで
やっぱり 大変そう
にこにこ にこにこ
てんしさまの はなしを ききます
おてては おいのりで
おみみは きいてるの
みなみなー みなみなー
「………」
返事はない。必要も無かった様子だし。
寒くはないが暖かくはない中で、
一点、二点だけが冷たい。
固く冷たい感触。二人分。
「……旅立ちが、見送る側にとっても、
何か物質として残るものがあるのであれば、それは……
それは…… ………………」
続けろよ いつもみたいな台詞を言えよ ………
「本物のお人好しらしいね。あの人」
もしかすると、本当に善意?
迷子探しを探してあげないとか。
「鏡で見たらびっくりしたよ」
「私も大概顔色が悪いけど、でも、ほら」
「生きてるよ。バースデイと約束だったから」
「え、傷だらけじゃないですか……」
シダレさんの様子に驚く。
最終日だというのに、おとなしくしてなかったやつがいたのだろうか。
「資材尽きてて、治療はできないんですが、……すみません」
「シーツ刻んで、簡易的に包帯でも作って止血だけでもしていいですか」
もはや終わり。意味もないかもしれないけど。
ボロボロなまま放っておきたくはない。
「ん ニーリさま かおいろわるかった」
「…… シダレ もわるい けど」
「……また、悪趣味な真似をする」
「缶詰は要りません。必要な人が持っていれば良いから」
手持ちは事足りているから。
とか、適当な言い訳をして。
「減る……かも、しれませんね~」
せめて、一思いに。誰かの役に。とも。
思う人は、少なくないかもしれない。
缶詰は、貰っておくことにした。
まいごの おしらせに こくこくと しました
まいごさん まいごさん さがしているらしいの よ?
傷は何一つ癒えていない。
腕の裂創も、刺し貫かれた腹も。
血の雫は零れるばかりで、相も変わらぬぼろぼろ。
「……ん」
「ニーリさんが?……まだ、探しているの」
二方向から迷子のお知らせ。
迷子は他でもない自分らしい。
「ふーん」
それだけで 缶詰 しまい込む
ぱんぱん だなあ ……
かんづめで おなまえだされて
かたほうが いのっていた あのこで
ちゃんと つかわれたのかしら
ちゃんと ゆうこうなのかしら
つめたい かんづめに わらいかけ ました
「んー、そうなんだ。」
缶詰、もらっておく。
「なるほど、オレの仕事、減るみたいだね。」
「……青い女の子。」
「あの時餞別にって思ってあげた資源、無駄にしたなぁ。」
「……そうですか~…」
明かされてしまった缶詰の由縁については。それ以上に言える事はない。
どうしたもんだかな、なんて思った。
食べるには……抵抗がありすぎるでしょう。
でも、無駄にはできないでしょう。
「おや、シダレさん」
「いります? 缶詰。多分人数分ありますよ」
「狩人さんと、ロビーの青い女の子です」
必要そうなら、渡そうとする。
必要でなくとも、あなたの分はずっと新しい部屋にあり続けるだろう。
ミナミナ天使 も来た
…… まあ そんな風 になるだろうな
あの 部屋を見たら
てんしさま てんしさま
おするばん してたのよ
わたしは いいこなのよ
たおれられたので ちかよらず おいのりだけ ささげます
みなみなー みなみなー