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「ア!」
噂をすれば、ちょうど来たね。
「天使さまも、おかえりなさいませ!」
「ああそう、シダレさまを見ませんでしたか?
さきほどニーリが探しておられまして…」
元気だ、と、言うのであれば。
いつも通りに応対するだけだ。そう、いつも通りに。
問いかけには、答えなくてもいい。
「あ シダレ」
「ニーリさまが さがしてたよ」
きっと 君はぼろぼろ だろうな
賑やかな 雰囲気は
そうだね どんどん無くなる きっと
ドキドキ させたいよね
きょと と 顔なしと缶詰
交互に見つめた
ロビーを覗き込んでみよう
夜も更けたからか、随分と静かだ。
前みたいに賑やかな雰囲気は、
これから少なくなるばかりなんだろうね。
「……缶詰?」
「そうですね、新しい部屋で、……」
「これ……その、」
「えっと。……狩人さんと、」
「………………、ロビーにいた青い女の子、……です」
名前くらい、聞いておけばよかった。二人とも。
「………」
少し遅れて、ふらりと帰ってきては、
ソファへうつ伏せに倒れ込んだ。
「……私は、元気です。
何も心配することは、ありません。」
くぐもった声で、それだけ呟く。
「おかえりなさいませ、ナデシコさま!」
「おや、お土産ですね?お疲れ様です!重くなかったですか?」
離れれば、戻ってきた者が居る。
缶詰の由縁は……いいだろう、聞かずとも。
けれど、その缶詰は、きっと重かった。
かえったひとに てをふってから うけとります
……かんづめ おみやげ かしら?
くびを かしげます。
「おかーえりー」
いつもの調子。
「なーにそれ。どこでそんなものが?もしかして、新しく開いたところで?」
「……思えば、あなたとも長い付き合いになりましたね~」
ロビーの片隅。動かない人蛇の元へと歩き、傍にしゃがみ込む。
触れず、息をしている事だけ確かめて、何もしない。
言葉はないが、確かにそこに居る。生きている。
動けもせず、かろうじて、か細い呼吸だけを繋がれること。
それが、いつか体力の尽きるまで、続くこと。
それが……良いことかを決めるのは、これではないが。
悪いことばかりではないと、いいと思った。
「どんなふうに生きて、どんなふうに感じていたか、聞けたらよかったのですが」
無責任に思うだけ。
それだけをして、またそっと離れていく。
「おかえりー」
そう 言って
きょと と目を瞬かせた
「なに それ ?」
「かったの ? おかねもち ……」
「ただいまもどりました」
「……、どうぞ」
スカートを広げたなかに、山積みの缶詰をもって帰ってくる。
受け取りを拒否しないようなら、ロビーにいる人々に2つの缶詰を配るだろう。
笑う 少女のように
表情豊かじゃ なかった
笑うべき 場面も 分からないし
笑い方 も
「んー」
そう 増える この先
増やすから
もっと飾るから
「やった。じゃあ休んじゃお。」
増えるなら、まとめてやっちゃえばいいよね。
そっちが効率的だし。
「ミケの子からの仕事もまだだろうし。」
今日はごろんとソファに寝転ぶ。
こまっちゃうわ こまっちゃうわね
いいこだからって いいこだからって
おいのりちゅうだんは ひどいじゃない
くすくす くすくす
もちかえったら 『せんせぇ』にも ほめてもらえる かしら。
「ん いいこと ……」
何が どうあれ ね
素晴らしい 事 嬉しい よね
「いーよ」
「じかん いっぱいある から」
そしてこの先 それは増えるばかりだから
気づいた。けど言わない。
「…」
「…仕事明日でいっかな。」
死体だからそこに残っているでしょ。
「………よいことです」
じわり、じわりとかさを増していく。
それが空から降ってきた、なんてものではないのは、能天気ないきものにもわかる。
それでも……由縁がどうあれ、生きているものの役には、立つだろう。
「…… ラッキーだって」
「おもって おけば いーや」
うん そういう事に しよう
原理 分からなくても そういう事 あるでしょう
もう こんなにはいらない けど
あった方が 長生き 出来る筈だから
「ぁ」
ときおり ひざにおいた ふくろが おもくなるたび
おいのりが ちゅうだん されてしまいます
わたし いいこだから かしら?
「…… ん」
知らない 内に どんどん
スカートの下 隠した 袋が重くなる
「自分は呼び捨てでいいと言ったのに、私にはさん付けをするなんて
水臭いヒトですね~…」
批難するような声色ではなく、まったくもう、といった感じだ。
何よりも、まあ、今余裕のある者の方が少ないだろう。
さるひとに てをふって
おいのりを するのです
おるすばんを するのです
「有難うテンさん」
「探していたと伝えてもらえると、助かります」
出ていく足を止めて振り返り短くお礼を言うと
その場を去っていった
お祈り屋さん も充分 ……
まあいいか
「ん ニーリさま」
「ばいばい」
行きそうなとこ 分からない
廊下と シャワールーム くらい で
「死人みたいな顔。」
捜しに来た青白い人を見た。
「気が狂った愚かな死に損ないならどっか行ったのを見たけど。」
これは、別の人物のことを指している。ちょっとしか見てないだけの印象。
「し、してない、と思う。多分」
「ここに居ないなら、いいんだ……」
「お邪魔しました」
青い顔のまま、でていくだろう
次に彼女が行きそうな場所は、どこだろうか
「ア!ニーリ!廊下ぶりですね~」
こんばんは~、なんて手を振る。
あんな放送の後だというのに、能天気ないきものだ。
「私も見ていません!力及ばず申し訳ありませんが…
もしロビーに来たら、あなたが探していたとお伝えしましょう」
「?」
「シダレ きてない」
「…… …… し した ?」
まさかね