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「……ん」
ふくろを みます
これは おもちかえり できるのかしら
これは わたしの ものなのかしら
きっと さいごの へんかした おみずを のみながら おもいました。
「んー ……」
「そだね ……」
しょうがない しょうがないの
仕方がない 仕方がない
だから
殺した人も 恨むつもりは無かった
「……止められても、相手も困っちゃいますよ」
「ご自身で考えた末の、やっとの決断なんですから」
人に心配かけたくないとか。人を悲しませたくないとか。
それよりも、自分が苦しみたくない、が勝っちゃったのでしょう。
その選択を肯定する気はないが。否定はできない。
最初のわたしもそうなので、否定する資格などない。
「し ふえたら いくないから」
「とめようかと おもった んだけど ……」
「わざわざ じぶん ってゆってて」
「とめるき なくなっちゃった ……」
「ごめん」
これは 疲れきった お祈り屋さんへの 謝罪
そう 本人が 望んだなら
本望 幸福 そうなのだと 思う から
ごめん も ありがとう も 無い
知らない人だし
危ない人だし
「……自分で望んで達成されたなら、きっと幸福なことですよ」
最初のわたしは望んでも、いつまでも。
ずっといきて、くるしみつづけている。
……望むまま終われたのを、ちょっとだけうらやましく思ってしまったけど。
葬儀屋さんの仕事と心労が増えるのは、やはり歓迎できない。
いっときの ときより しずかだなと おもいました
あのときが うるさかったのかも しれません
それでも いつだって
いいこのわたしは きれいなのよ
新たに開いた傷はない。
死体の数歩手前のまんま、布を掛けられて静かにそこに寝かされている。
「わからない けど ……」
思い返す でもあの人 嫌いだからなあ って
良いふうに 何にも とらえられなくて
だけど 変な事言うと お祈り
して貰えないかもしれないから
「…… …… たぶん それのせいだから」
「たのんだの の せい ……だから」
しずかだった
傷はない
「……減ってしまわれましたか~」
ここに居る、生きているものたち。
総数は、数えたこともないのでわからないが。
数字だけのものではない事は確かなことだ。
「私はこの通り!元気ですよ~」
「よかった」
「自害、ですか。帰りたくない理由でもあったのかな」
勝手に推測だけするが、さほど興味はなさそうだ。
死体は治療してあげられないもの。
「ん ないよ だいじょぶ」
他は あるかな ?
死 増えてないのが 良かったけど
…… ……
「しんだの ひとつ シャワールーム ……」
「さっき とりひきで じぶんをころせ ってゆった ひと」
お祈り屋さん 行ける かな
行け ないかもしれない
疲れてる かも だから
すくなくとも わたしは げんき
おいのりしてたからね
おいのりしてたからよ
ちのにおい ふえたような そうでもないような
ただ いまは ほうそうを まっています
かえりの ベルは いつかしら
消灯・点灯。
とくに傷を負った様子もなく。
いつも通り省エネ的薄さで暗転を迎えたらしい。
「……皆さん、お怪我は?」
きょろきょろ。周りの様子を気にする。
明かりが 戻る頃には きちんとそこに いた
いつものように
「また ふえた ……ね」
お祈り屋さん の方を 見る
変な 商売もあって かわいそう
かわいそう
その 暗がりに いなかった
「……… では。」
「えぇ……」
そ、そんな商売が……。
賢いね。2人で同じやつを刺せば殺せる確率は上がる。
もうすぐだ。
もうすぐで終わる。
こんな人生も。
「あーあ…」
最期につぶやいた。
「つまんないや」
「やぎにか」
「賑やか2~失われた声を求めて~(賑やか2~失われた声を求めて~のSE)」
「に、ぃー」
にぎやかー
「そっかぁ〜」
ゆったり。
「ん いつも シャワールーム だけど」
「ひと おかねつかって ころすはなし してたから」
「やだなー って おもって」
「賑やか~(賑やかのSE)」
「ようこそようこそ。今日はまあまあの賑やかさではないでしょうか!?」
「地獄のことはわかりませんから~、天使にも判断できかねますね~。」
地獄 ってあるのかな
天国 ってあったのかな
この閉じた世界にも それは 訪れるのかな
放置された 死体に
それは 訪れているのかな ?
「……」
お祈り屋さん かわいそう
お仕事 いっぱいで
いつも参ってる
「刃が向けられようとも
向けられずとも」
「終われど、終わらずとも……」