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「なるほど。ご本人が納得しておられるならいいのですが……」
「おぉ……? 異能。特殊な能力ですかあ。特別な感じがして、いいですね」
概念はわかるが、おとぎ話の世界のような印象を受けた。
こちらの世界には体系化した魔法しかないので、自分だけの特別な力などは見たことがない。
……。
薄まる少女の姿に。
消えてしまう? などという言葉が脳裏をよぎるが、言えなかった。
詳しくもないものに、適当な推測を話して不安がらせるべきではない。
明日だ。明日、出られるのだから。きっと大丈夫。
いいこ なくなっちゃうの?
うすくなったその人を みながら わたしは ぎゅうと ふくを にぎりました
……そうなったら こまってしまうわ
「……どうなるのでしょうね。」
「正しく捧げることが出来ないと……」
「見返りなら、すでに頂いております。」
安心安全後払い!
「まあ、簡単に言えば異能の類なので、ここでは役に立たないのですが。」
物を冷やしたり凍らせたりとかできたらしい。
「ふむ、神 様……」
一番一神教っぽい天使だが、
あまり引っかからずに話を続ける。
「……正しく捧げることが出来ないと、
どうなってしまうのでしょう?」
「神様が人の魂を……?」
宗教観が違うのでやはりいまいちピンとこない。
が、とりあえずはそういうものだと思っておく。
「なにか見返りはあるのです?」
「悪魔ではなく……」
「なんか、こう……
小さい祠の神様?」
一神教のところの人がいたら、上手く伝わらないかも……などと考えつつ。
「魂をささげる……悪魔とかにですか?」
人の魂を欲しがるやつを、それくらいしか知らない。
異世界には悪魔のほかにももっといるのだろうか。
「祈って下さる貴方のことです。覚えていたいとは思いましたので。
それでも忘れてしまうことはあるので自慢できませんが……フフ……」
たましいを ささげる
なんだか にっこり しました
ロマンチックね ファンタジーね
きっと ぜんぶつかってくれるのね
「その話も関係します。
要するに、明日か、明後日か……
数日後にはある存在に、私の魂を捧げることになっているのです」
問題は、ここから向こうまで捧げることが出来なそうだということ。
「ああ、覚えていてくださったのですね」
「ありがとうございます、天使さま。」
喋っている間に明滅してらっした……。
「契約…… 魂を持っているかわからない……ということに繋がる話でしょうか。」
言われて
手のひらを見た。
ちょっと透けてるかも。
刻限は近く。
「少し、その……
なんて説明したらいいんでしょうか。
契約の都合で……」
説明のための言葉が見つからないだけで、聞かれたくないわけではなさそう。
みなさまは わるいこ なのかしら
みなさまは わるいこ なるのかしら
ほうそうさんが いってるわ
ほうそうさんが たすけてくれるわ
やくそく やくそく ですもの
いいこで いきて いますもの
みなみなー みなみなー
ほら おいのりだって してますもの、ね
「出られない場合として考えられるのは……
別の空間に移動させられるか、
この空間に閉じ込められるかの2パターンです。
後者であるか、或いは前者でも余裕があれば蘇生は出来ますかね。
……閉じ込められるとわかった状況で蘇りたい方となると、絞られそうでもありますが。」
「……あの?」
気のせいならいいのだが。
「最近、なんとなく……お身体、不安定になってきてないですか? わたしの目の錯覚だろうか……」
「もともと精霊族の方とかですか?」
先ほども気になったことを少女に問う。
光源の問題でもないだろう、と上の明かりを気にする素振りを見せつつ。
「五千兆金貨欲しい」
呟いて、小さく笑った。
一瞬ののちには、元通り。
「警戒は大切ですね。」
発言もいつも通り。
「明日出られなかったら……まぁ」
「お詫びに金貨五億枚くらいもらって、ここで過ごしても全然いいんですが」
わがまま。
影が
姿が
揺らぐ。
「それは確かに……」
「ちょっとくらい、って怪我してるの隠す人とか」
自己紹介。
「悪意があって刺す人とかもまぁいるかもしれませんしね」
そんな人がいるとは思いたくはないが。
「難しいなあ……」
「そもそも明日本当に出られるのかもわかりませんからね……」
「私はあのアナウンスの人を信用していないので。」
強めの宣言。
だからといって他人を襲って生きようとするわけでもないのだが。
「死者に聞いても答えてはくれませんからねえ……」
へびさんの様子が大丈夫そうなので内心ほっとする。
痛かったらもっとじたばたする……する、だろうか……。
今までの反応みるに、痛みにおとなしくなるタイプな気はしている。
いまが苦痛でないといいのだが。
青い少女の様子も気になるが……先ほどのはやはり目の錯覚だったのだろうか。
ライトの問題でもあるまいと、天井の明かりに目をやる。わからん。
「お気をつけて」
テンさんを見送り、片手を振り返す。ひらひら。
「人を復活させたけど資源がなくなって倒れてしまった~ってなったら悲しいですからね~。
脱出とやらの仔細がわかってからかもしれません。やるとしても。」
「いってらっしゃいませテン様~。お人探し運を祈ります、ミナミナ~。」
りょうて ひらひらには
りょうて ひらひらで かえすのです
ひらひら~
「死者の中にまだ生きていたいヒトが居たなら、私は土下座でもなんでもする所存ですが……」
「それで自らの資源を切り詰めてしまわれる方が居られないかは少々心配なところです」
「ともあれ!お騒がせしました!もうちょっと探しに行ってきますね~」
両手をひらひら、ロビーを出ていくだろう。またね~。
「おや、おかえりなさいませ。……おお、元気は大事!ですね。」
手を振られたら振り返す。
今は少し薄いくらいで済んでるかも。