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「………どこだ。」
DREAMからの自動放送:死者を検知しました。数量:2 合計:6
「………。」
「………では。」
「らくがき。」
「子供がめくったら大変だし……よしこんなもんでいいか」
雑にやり終え、シーツをかけなおし。とっとともといた壁際に戻る。
珍しく、立ったまま暗闇を待つ。
寒くもないのに一瞬震え。
深く、静かに。溜息をついた。
「只今只今~。……」
「私は、皆々様方が安らかであれるよう祈るもの。」
「誰であれ何であれ、魂をお持ちであれお持ちでなくとも……
そうであってよいと、思っております。」
「今日も平穏無事に終わることはないのでしょうが。
せめてそうであるように。終わりだけでもそうであるように。
祈っております。ミナミナ……。」
ほめられました?
ほめられました!
わたし いいこなの!
わたし すてきなの!
だから このさきも いいこなの!
「むだづかい ……」
だけど したいなら しょうがない
気持ち 全然分からない けど
「らくがき ?」
もうすぐ。
気だるげに、重たげに、腰を上げる。
「暗くなるの終わったら、らくがきでもしよっかな。」
「おかえりなさい」
天使様に声をかける。今日も元気だね。
「……臨時収入はいったので無駄遣いしちゃおっかな」
箱に近づき、医療品を買いそろえた。これだけなら無駄遣いではないが。
「ご遺体とはいえ、同じ部屋にいるのにこんなズタズタじゃ流石に気がめいる……」
「見た目だけ、少し整えてしまおう」
へびさんに近づき、シーツを少し開き、ボロボロになった包帯を取り換える。
これは流石に無駄遣いだろう。死体なのだし。ね。
「今日もお留守番ありがとうございましたムー様~ えらぁ~いっ!」
にこにこ にこにこ
てんしさま おかえりなさいね
すこし 考えた事、は ひとまず おいて
いつもくらいの てんしさまへの にこにこよ
おるすばん とくいなのよ
おるすばん できるこなの
「皆々様方、この天使ミルメコエル、只今戻りました~!」
「さてはて、本日も暗闇の時間が近付いてきておりますね。……」
部屋を見渡しつつ。
しこうは ふわふわ
おいのり みなみな
てんしさまが おでかけされたのは しってるけど
ふえたりへったりも したかしら
ふえたひとには てを ふりました
ぽんやりと考えながら。隅の方で暗転を待っている。
彼女の存在感が初日より薄いことに気づくものも
いるかもしれない。
皆の袋の中身が良い子への贈り物なら。
私は悪い子なのでしょうか。
……こんなことを考えてしまうのは
きっと悪い子に違いないのです。
「むむ……うーん。人が多いな……」
起き上がる……傷はいまだ痛むが、浅い。ないようなもんだこんなもの。
いつもこうだったか? さてさて。
立ち上がりがてら金貨の袋を持ち上げる。
「……?」
重い。
「誰かと思えば、大学生くんじゃん。珍し。今日はあの2人とつるんでないんだ。」
「そーそー、ここは死気と殺気むんむんになるからね。物騒な場所になったよ。あそこと違って。」
なあんにも 責めるつもり なかった
シダレに 言ったのと同じ で
しょうがなくて 仕方がなくて
それは正しい と思っている から
蛇だって 蘇生させようとは
思わなかった
みんな 死んでる方が 良いのだろうと思った から
「ぷー ぷー(鳴き声)」
「……………」
ああ、己を刺したものの一人の声だ。かといって恨む気はない。そういうもの、だ。強いものが弱いものを殺す。自然なこと。
……だから、まだ己が生きている意味がよく分からないのだけれども。よほど此処は変な奴等ばかりなんだろうな。
「んー ここにいた」
ソファで 蕩けてた
でもそろそろ 気をつけなきゃ いけない時間 かも
「こっち くるのめずらしい」
「じぶん まもったほうが いーよ」
「ア!廊下ぶりですね~! コニチハ~」
ぬるりとやってきてヘッドホンの彼に手を振った。
「誕生日の子じゃねーすか」
「今日はここにいるんすねー」
ヘッドホンすよ〜と手を振った。
今日も耳に当てたままだ。
「ヘッドフォン」
これはシーツの方へは近付かない。
ただ、終わりの近くなってきた場所を見てまわりたくなっただけだったから。
あまり騒がしくなさそうだったから、足を運ぶ男ひとり。
殆ど初日に来たっきりだったかもな。ロビー。
「……」
静かになった。
賑やかな音はどこへやら。
「…」
ふう、と息を吐いて天井を見る。
「どうせ、今日も出るんだろうな。」
「奴らは気づいている。」
「…あーあ。」
「めんどくせぇな。最期まで仕事出すなっつーの。」
「……」
「よし、私……暗闇が訪れる前にちょっと外を見て回ってきます!」
今はその方が落ち着けるかなあ、という考えと……
単純に籠もり続けていたというのもある。
「ごゆっくりお過ごし下さいね~。ミナミナ~!」
「……」
おいのりの あいま
てんしさまの おめめが それたなら
そっと わたしは おのどを なでてから
すこしだけ すこしだけ
『私について』
かんがえるの でした。