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「ボクは、殺らなきゃ殺られる世界に居た。」
「でも、殺しが許されるとは思ってないで」
「戦争でも、人を殺すのはよくないこと」
「…せやけど、そんな綺麗事、言っとる暇なかったわ」
「もちろん正当化しなければ生きていけない、という方も居るのでしょうが…」
「これが……信仰の必要性!?」
「私の勝手な気持ちを言うのであれば、せめて、正当化はしないでほしいな~と思うところです」
「死んでいい命など、あるはずもありませんよね?」
よかった……ニコ……
ほんものの てんしさまの えんぜつを きけたので うれしいです
にこにこ にこにこ
「エッ!?違います……よ…… ……ね!?!」
「……私はね、皆々様方に安らかであって欲しいのですが……
安らかでありたいから殺す、も、殺しがあったら安らかじゃない、も……
両方間違っているものではないと思うのですよね。
絶対の正解が存在しないのが無情の現実というもの。
故にそこを超えた先の絶対として、信仰を提供するのが……
この天使に出来ることなのですが。これも信じて貰えないと如何ともですね……」
「相談・悩み事があれば、お聞きするということは出来るのですが~~……」
出ていっている姿にも届くような声で。
まあこの流れでそうなるかというと
難しい気は当然するけれども。
門口だけは開けておく。
「天使様の演説、一度も聞いてないけどあんななんだ……」
天使への風評被害が発生した。
てをふりかえされれば にこにこを かえしました
おかえしは うれしいものなの
てんしのえんぜつ
そんなことばを だされて そーぎやさんを みました
……てんしさまでは ないと おもいました。
「……味方、いるでしょうか……?」
首を傾げた。
絶望を、死を、その先までも。
幾重にも重なった記憶を持つものにとって、味方など。
何の役にも立ちはしないだろう。
「ま、ちょっと天使の演説っぽくやってみたかっただけだし。襲われてないからわかんなーい。」
蛇に抵抗されたか、暗闇で誰かに刺されたか。
全部。全くもって確かじゃないけれど、
生傷の絶えない体になっちゃったな。
「ナデシコさん、」
「皆に心配を振り撒くのはいいけど、」
「いつか、誰も味方してくれなくなっちゃうよ」
返り血は洗い流そう。洗えば綺麗になるから。
いいことしてる筈なのに、何もかもおかしい。
邪魔者は自分みたいじゃないか。皆して狂ってるのか?
なんでだ。非難も、冷笑も、一切をされる謂れがない。
訳が分からない。苛立たしげに髪を掻きながら、去る足を向ける。
手を振ってくれたので手を振り返す。
なんかだいじょうぶな気がしてきた。
表情は見えないだろうが、いくらか穏やかな雰囲気になる。
「へぇ、だからやったんだ。」
「それがさ、もしも人だったとしてもやるんだ~」
「本当にやったかなんて本人たちにしかわからないってのにね。」
「……ムー様はいい子ですね~……」
「いってらっしゃいませ~……」
「……裁定や相談が必要であれば買って出るのですが。
お互い言えることを言っておいた方がいい、とも思うのですよね。
それは救いがあっても今しか出来ないことですから……」
おでかけさんを しせんでおって
しゅんのひとには だいじょうぶよと てをふりました
だいじょうぶよ だいじょうぶなの
てんしさま ちかくにいるもの
いいこにしてたら だいじょうぶなのよ
「…怖いなぁ」
「そうですか……とはいえ、できるだけはやく処置をしてほしいです」
拒否されれば、おとなしく引き下がる。
ここに処置の必要な怪我人がいないのであれば、他の場所でも……と、一瞬廊下へと視線をやるが……
こんな雰囲気の中で離れるのもなあ。
おとなしくしゅんとしている……しゅん。
尻尾を出した者が数名…
遺体には特に恨みも哀れみも持たないが、何も言わず静かに話を聞いている。
わたしは。
こんな口論をするほど全力で
生きていたいと思えているのだろうか。
そんなことを考えながら。
逃げるようにゆらりと部屋から出ていった。
「……はぁーあ、物騒だこと」
何故か呆れが出た。
これで満たされるなら、いいのかもね。
「十分過ぎるくらいに、平和的じゃない?」
「人に害のある獣は始末しないといけない」
「人がさ、生きていく上で仕方無い。皆やってることでしょ」
なんでだ?なんで悪人扱いされるのかがわからない。
蛇が何事か口に出したのか?そんな訳が無いな。
ペットに噛まれて死ぬ人なんて腐る程居るのにさ。
ああ、それって自殺志願者?
「肩入れする理屈がわからないんだけど……」
「まあ、いいや。……怪我?怪我はいいよ」
みちびかれたのなら
めーめー なくように ちかくにいきます。
すこし かたくなった おいのりも
すぐに もとのじょうずに なります。
「……総意ではありませんので~」
屁理屈だ。
とはいえ、どちらにしても、そうだと思う。
「……その蛇以外にも誰かを襲い続けてる人はいるのに……」
「その人の事もそうやって殺してくのかな」
なんて、ぼそっと呟く。
「……………。」
パニックを完全に防ぐことは出来なかった。
力が及ぶことはないな。と思う。
「おそばへどうぞ。」
寄る姿は手で導くように。
……わるいこが しかられてるの かしら
わたしは いいこだもの いいこだもの
けんそうから はなようとして
もしくさ まだいらっしゃるなら てんしさまの ちかくに いきます
いのりの おてては ぎゅうと にぎりました。
「シダレさん、お怪我してます? 返り血かな……」
遠くからではいまいち判別がつかず、そろりと近づこうとする。
見た感じ治療が必要なようなら、そうするだろう。
「ひどいなぁ、ひどいなぁ!!何が平和的に、だよ!!平和的じゃねぇじゃん!!あは、あはは、ははは!!」
「……おかしなこと言う」
「理性の無い蛇なんだから、殺さなきゃ死ぬのは自分でしょ」
「間違った事してるかな。間違った事言ってないよ」
次?次だとか、別に今は考えてないな。
人を殺人鬼みたいに指差すのやめて欲しいんだけど。
獣を狩って、獣が可哀想とかいうタチかな。それって迷惑だ。