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「あわ……葬儀屋さん……」
葬儀屋さん一人に、死の全てを押し付けるのは荷が重いだろうか。しんぱい……。
生者を優先したいところだが、それにはもちろん葬儀屋さんも含まれる。
他者の死と深く向き合うのは、この場所では葬儀屋さんだけなのだから。
「……ぁ、!」
おおきなこえに おどろいて
おいのりの てを くずしてしまいました
びっくりしちゃった
おどろいてしまいました
「よかったよかった」
合ってるらしいので、よかったと思った。
それ以上のことは特に何も考えていない。
「ほんとう、醜い、なに……」
その状況に子供は吐き捨てる。確かに、悪い人だったかもしれないけど。
場所投稿ミスってる!失礼しました──
「…はは、ははは、あはは、」
「良かったなぁ!なぁ!良かったな!!」
「お前が、誰かがやったおかけでで、蛇は死んだ!!これでお前のいる場所にいる奴らは安心するだろ!!」
「次は誰を狙う?今誰が怖い?怖いだろ、そうだろう怖いだろ!なぁ!なぁ!!」
実際、暗かったからわかるはずもない。
あくまで平静を装って、ここまで戻ってきて。
シャワー室のひとつに入って、隠していたナイフを取り出す。
「はは、ははっ」
「やった、やった、ちゃんと殺せた」
自分たち以外にも、あれを狙う人がいたなんてね。
本当にオーバーキルになっちゃったなあ!
凶器のナイフを洗い流す。
そのうち血の匂いも混ざることだろう。
ここには怪我人も、証拠を消そうとする犯人もよく来るから。
今度はうまくやれた。
あのふたりもきっとうまくやったんだろう。
やってみれば呆気ないもんだ。
あのときと一緒。
あってる?の ことばに こくこく うなづきました
おててあわせてね みなみなーって するのよ
したらね 幸せになれるのよ
「もっとみなさまに時間があって、余裕があれば、結果は違っていたのかもしれませんが…」
「ないものねだりをしても仕方ありませんし、過ぎたことも仕方ありません。
せめて……救いのあることを願うばかりです!」
死者にも、手に掛けた者にも。
「なるほどね……」
「死体は……ここか……」
ちらっとロビーの様子を見る。バタバタしてるなって。
いつもより ちのにおい つよいかも?
おいのりの てをとめずに ふとおもって
それから わすれました
「ああ、蛇さん……」
まあ、あれだけ恐れられていたものな。
仕方ない。
己に言い聞かせ。
「お、ついに死んでる」
「結託なんかする余裕あったんだね、ここの人」
青いシーツに手を合わせて、ミナミナ唱える。
「こんな感じだっけ? ここの流派は」
「まだ平和にはならないけど、大丈夫だよ」
「これで皆、ちょっとだけ安心したでしょ」
肩を上下させながら、荒く、荒く、息を吐いて。
平和には礎が必要だしさ。そうだ、生きる為に必要なことだよ。
返り血なんてお構い無しだ。傷付いた右腕を庇いながら、蛇の死骸から離れる。
暗闇の中、足音も何も無かった。
最後の抵抗かそれとも似た考えの奴が想定より多かったのか。
横腹を掠れた冷たい感覚に続く熱。
攻撃をされた。
だから、暗闇でやり返した。そんな理由になるかと考えて……
怪我を負った弱者であるという負利益の方が多そうだったから、滴る赤色を放置して
暗闇に誰かの目が慣れてしまう前にさっさと消えた。
肉を抉る刃の感覚は、親父とは違うと思った。
「…………」
合わせる手を下ろし、薬を口から放し、息を吸う。
ふ、と息を吐く。
己には何事もなく。暗転し、明転した。
「……ご無事の方々はご無事で何よりです。」
「そして……ここ以外に死者は出ていないようですね。」
「……」
ふー、と。深く、息を吐く。小さく。僅かずつ。
出来る限り吐き切ったのち、身体の力を緩めれば勝手に空気は取り込まれる。
痛みには慣れている。
幸い、顔はない。表情ではわかるまい。服も黒い。血は、目立たない。
声さえ平静を装えば、変わりなく見えるだろう。
ふら、と起き上がり、一度周囲を見回す。痛みに大騒ぎしている人がいればそちらを優先しようと。
いないようなら、わかりきったことではあるがへびさんに触れて脈……が人間と同じところにあるのかはわからないが。一応見てみる。
「……多分、亡くなってますね」しゅん。
「昨日の時点で既に致命傷に近い傷の跡がありましたから。」
「ここまでに接する間があったのは……よい方の結果と言えるでしょうか。」
「私が判断できることでは、無いかも知れませんね。」
いつもより ほうそうが
おおきく きこえた きがして
ピクリ しました。
それから まわりが てを あわせているので おいのりを しました
みなみなー みなみなー
「っ……しぶっ、といなあ」
暗闇の中で、刺す。刺す。
何度も、何度でも刺す。
何回刺されたら気が済むの。
何回刺されたら死んでくれる?
もう、いい加減に死んで欲しい。
刃の欠けたナイフで蛇腹目掛けて突き刺すより前に、
蛇は、十分過ぎる程に弱っていたらしい。
応援をしてくれる人も居たみたいだ。
なんだ、皆も邪魔だって思ってたんじゃん。
じゃあ、やっぱり正しい事だったんだね。
僅かな間の暗闇から照明が取り戻されて、
一仕事終えたみたくに、深く溜息を吐いた。
「余計に一人死んだな」
「…次は誰を襲うんだろうね。」
手を合わせて、念じるように始めた。
「……ボクも生きてるで」
手を、合わせる
DREAMからの自動放送:死者を検知しました。
数量:2 合計:4
「きっと、どこかの集団にとっては、これで平和になった。って思うだろうね。」
「それで、次の不安材料を潰しにかかる。」
もうひとつ、存在していた物にもシーツを掛ける。
「青い天使が導いてくれると良いね。」
「生きているものが減ってしまうのは悲しいことです」
「せめて…生きるためにそうしたのだと思いたいですね?」
へびさん もう ちかづいても しゃー しない?
しゃーと いわれないように ゆっくり ちかづいてみて
だいじょうぶなら そのまま はなれました
しゃーと いわれなくて よかったと おもいました。
予想していた死者については…… ……やはりある。
「ええ。」
「今回は、行ってしまわれましたね。」
蛇と称される方の、今回も何度も刺されたのだろうその体に、
一度手を合わせてから、用意しておいたシーツをそっと重ねた。