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ふふん ……
褒められ 満足気
殺した 死体を処理している
だけ なんだけどね
「ん みんな しんじゃった」
「ろうかにいた けど そこだけで4にん」
目の前で 2人
すぐ側で 2人
血塗れになるのも 無理は無い
「……知らない」
起きた時には、2人とも姿がなくて。
だから、納得とともに。
気を遣わせているのだろうかと、申し訳ない気持ちと、不甲斐ない気持ち。
「…そんなに、死んでるんすね」
「そっか…ありがとうっす、教えてくれて」
「お手伝いえらーい」
ほめる……。
それで血がついちゃったんだ。納得……。
「寒い部屋に安置したほうが、きっと遺体の崩壊は遅いはずなので……」
シーツで隠しているとはいえ、異臭もするだろう。
快適に過ごすにあたって、悪くない選択肢ではあろう。
「?」
「ほかのとこで しんだ したい」
「みつあみ ……シャワールーム のひとたち てつだってくれた」
「みなかった ?」
仲良し だろう 君達
誰も 順番は来る
ひとりひとり 殺しに 伺う予定
その前に きっと 死ぬ人も大勢いる
けど
「へいわてきー」
良く 分かりもしないまま いーね
をする 眠たさも相まって ゆるい
「みんな はこびちゅう」
「おいのりやさん いっかいで おいのりおわる」
素晴らしい 計画に違いない
「集めて、って…」
「あの、機械じゃないやつで…死んだんじゃ、ないんすか…?」
缶詰になる、までは知らずとも。
あんなものに潰されたらぺしゃんこで。
あつめるものもないのでは、と。
何も、知らなかったから。
さっきまで、ずっと眠っていたせいで。
「お花屋さん。いいですね……ふふ」
どこか退廃的な雰囲気を纏うあなたにそれが似合うかどうかはさておき。
花に囲まれるあなたは美しいに違いない。
植物の世話をする姿を勝手に想像して、にこにこした……
「なるほど? それはたしかにそう……」
ここにあるものも、冷凍室に運んだ方がいいだろうか。
話したこともないいくつかの遺体と、少しだけ一緒に過ごした遺体を眺める。
死。
いつか来るだろうね。
今ここにいる人たちみんな。
死の順番は必ず来るから。
「うん。花屋。平和的じゃない?」
フリーズはしてなかった。
元から壊れてるけれど。
「…なんだ、結局死体をあそこに運んだんだ。」
「ん」
「さむいとこ に したい あつめてた」
「くさっちゃうって ゆって」
「みんなー」
「てつだってた」
「……」
今ある、記憶に新しい死体には目を向けなかった。意識的に。
だから、はっきりその文言が耳に入る。
「…あの子も、死んだんすね」
元より 頭の悪い 子供だ
理解力は 乏しいし 共感能力も 同じくらい 低い
悲しい が どんな形かも 分からない
例え 知ったって
死 が未だ どんなものかも 分からない
「はなや」
あ 喋った
フリーズ してないねえ
来世 まだ先だと 思うけど
あの様子だと、理解されてないだろうな。
いや、わからない。
「次の人生で何屋、か。」
「出来ればアングラな仕事やるのはこりごりかな。平和的なのがいいや。…そうだね、」
「花屋。」
桜、見たかったな。だから。
「……そう、ですか」
死んだというなら治せない。しゅんとしちゃう。
あちらが先に亡くなったなら、やはりあちらがお姉ちゃんなのだろうか。
黄泉路、ちょっとだけ待っててくれるといいな。
おろ 視線が 右往左往 した
ヘッドフォン も来た
お祈り屋さん フリーズ した ……
「ん ん ?」
「ん シダレの」
「しんじゃったから ……」
「おや、いらっしゃい……」
たしか。愛という少女の、シーツをかけられた遺体を見て呆然としていた人だ。
遺体はきっとそのままそこにあるだろうか。それに、ちら、と視線をやった。
「シダレさんの? ……」
昨日止血はしたはず。新たな出血が?
しんぱいそうに、廊下へと視線をやった。
目の前の少女がやったとは思っていない。
他者を害する、手がないから。
何か用事があったわけでもなく。静かな部屋を歩いてまわっている。
ここもまた、人が減ってしまったんだろうか。
「あ」
バースデイの姿を見かけたら、思わず声が出ただろうな。
キミとは何度か言葉を交わしたから。
あ ?
「あぁ、……」
「次、人生があるなら何屋さんになりたいです?」
死。触れることに慣れても、心をむしばむものはあるのだろう。
話をそらそうと、……いう意図もいくらかはあるが、純粋な興味から質問をなげてみる。
「ふふ。わたしが救った人数より、ほかのくろーんが殺した人数のほうが多いですが……」
「いくらかでも贖罪になったならいいなあ」
罪は不可視であるが、無いわけじゃない。
ここでの行動を、冥王がみてくれているといいが。
あ 難しい話 してる ……
ちんぷんかん だった
分からない事は 言わない
分かっても 言わない方が良い事 いっぱいある
「ん ちがう」
「これはー シダレの ち」
ニーリさまの 血もあるかも
目の前で 2つ 死んじゃったからなあ
あ。
「……えっ」
血に塗れた姿を見て。
「お、お怪我ですか?」
しんぱいそうにする……。
充分な医療品はないものの、止血程度ならできるが。
立ち去ったのを見れば話を続けて。
「多分。」
「依頼されてさ、死体を埋めるとか燃やすとかしてくとさ、精神病むんだよね。それで、薬に逃げて、それから。」
「…葬儀屋なんて仕事、好きじゃなかったよ。」
気が狂った。
「ま、でもさ、」
「お世辞でもそう言ってくれるの、悪くはないね。ちょっとだけ、葬儀屋やれて良かった、かな。」
どうせ死ぬからいたずらにおちょくったりしたけど。
少なくともそれなりに長くいた人から言われるのはなんだか変な気がする。
「ナデシコも、ありがとう。」
「少なくとも、今のキミは、優しいキミだったと思うよ。」
ぷあー と欠伸しながら
ぽて ぽて
冷気と 血に汚れた 服で
ダンボールと その装備品と
すれ違ったろうな
「あ おいのりやさん おきてるー」
「ひと すくないー」
「日頃の行いですか……」
「まぁ、罪もなくここに来た人々もいるかもしれないので、そこはあまり」
「でも日数ぴったりだし、必然的なものは感じますね」
「別に、誰も死ななくても同じ結末になっただろうに……」
襲撃さえなければ。初日の分でおそらく資材は足りた。
みんな踊らされただけだったのだ。
あるいは、欲望のまま振舞った者もいたのだろうか。
どちらにせよ、みんな死ぬという結末は同じなので。
そう気にすることでもないか。
「災難だよねー。偶然か必然か。ま、日頃の行いが悪かったから。」
死体をどれだけ処理したか、なんて。
「別にいいよ。ナイフ売られてた時点であ、これ死体出るなって思ったから。」
つまるところ、諦めた。
「今頃主催のいないアフターパーティーかもね。」
立ち去るならじゃあね。と。
「お元気で。」
「……そうか」
「……じゃあ、その日まで。尚更、良い日になるといいな」
シホの言葉に沿うように、言葉を選ぶ。
これ以上は、響かせられないと思って。
「結婚式!?……あ、ちょっと心の準備がッ」
そう、言いながらも慌てて引っ張られ次の場所へと赴こうか。
「えぇ、そちらさんも。よき一日を」
ひらりと手を振り、二人を見送った。
「病でしょうか……だったら仕方ないのかな」
病は直せない。あきらめ……。
「……葬儀屋さんには帰りたい場所があったかもしれませんが」
「あなたがここに来てくれて、わたしはよかったです」
「みんなのご遺体に、平等に、真摯に向き合ってくださるの……きっとあなただけだったので」
自分には真似できなかった。
宗教観の違いからか、この怪物は死者に関してあまり感情がない。
「ありがとうございました」
深々と、頭を下げてお礼を言う。
この怪物には弔いというものはよくわからなかったから、手伝うことはできなかった。
一人で死と向き合うその精神には、随分と負担をかけてしまっていただろう。
ただ、その弔いというプロセスを見ていると。
救えなかった、というこちらの罪悪感は不思議と少し薄れていた。
自分のエゴでへびさんの死を偽装するにあたり、積極的に動いてくれたのも葬儀屋さんだ。
「あなたに出会えてよかったです」