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「そんな、蛇使いじゃないんだから」
「……健気で立派な天使様ですね」
「……他所で何も起きなきゃいいけど」
「どっちにしろ暗くなったら何か動くはずにゃ
それならこのまま睨み合いしてるのも手かもしれないにゃ~」
「……危ないから離れてた方が」
「……空調の効きが良いから来たのかな、蛇の人」
頷く子は気抜けた微笑を浮かべていて、ちょっとかなり心配だけど。
離れるにしたって安全と言える場所があるのかはわからない。
「……………」
ソファからは立っており……
「へ、へ、蛇~蛇様~、ハアッ蛇様~、蛇様よ~~い」
視線の移り変わりようには気付いたのか、そのフレーズを繰り返す。
「フフ……受け取っていいのかわからない尊敬の視線を感じます……」
「私、やれることはやりますとも~!いやちょっと疲れや眠気に負けたこともありますが。
肉の器というのは不便なものですねえいやはやフフフミナミナ~……」
「……このまま……このまま行きますか……。
う、うおおお。この天使ミルメコエルに注目し続けてくださ~い。
そして何もしないで休んで過ごしましょ~お~ ………」
蛇、という単語が出るたびに視線を発言者の方へ移している。自分が蛇であるという自覚はしっかりあるらしい。
…ロビーから去る気配はない。
「……何となくわかりました。天使様も大変ですね」
「進んで仲介役を担うの、心労も多々あるでしょうに」
「時間が過ぎるまで睨み合い継続かも知れません」
てんしさまの ことばに うんうん
てんしさま すごいのよ へびさんのことばが はなせるのよ
わたしには わからないけど
「蛇の方がいらっしゃるのでコミュニケーションを取ろうとしているのですが上手くいきませんでした!
そうこう言っている間に……恐らくそのー そろそろ例の時刻が来る気はしており……いやあどうしましょうね……」
「……あ、居た」
昨日停電が起きたらしい時間、もうすぐに訪れる筈だから。
ロビーまで足を伸ばす。隠れ蓑は沢山あった方が良い。
「……なに?この空気」
「……………………」
言葉の通じない相手からも、ここに来て
何度か受けた類の視線を頂いたことにより
天使はちょっと、まあまあ、つらくなった。
かっこよく決められればよかった。
「…………、……どうしましょうねえ……
少なくとも皆殺しにしてやる、という殺気はありませんが……」
「あら、蛇の方。」
「……ことばは、難しいですね……」
懸命な努力にもかかわらず、なんだこいつ…という怪訝な目が天使に向けられた。頷きは得られないだろう。
ぴろぴろと舌だけが揺れている。
てんしさま へびさんのことば はなせるのかしら
つうじるの かしら
……わたしは そう おもったのでした。
「涙ぐましい努力にゃ~」
「……………、……………」
天使には、蛇の言語を話すことも解することも出来ない。それは天使ミルメコエルの領分ではない。
もし爬虫類ではなかったり、或いは音ではないコミュニケーション方法ならまだ可能性はあったかもしれないが……
「………………ジ、ジジー、ジジーホフジリリリリリリ……(少なくとも蛇の言語では一切ない何か)」
苦し紛れの謎のコミュニケーション音声も全然通じないし、通じられないだろう。
良い子ですね……
そっちは頼みましたよ、ニコ……
そんな感じのジェスチャーを……
いやジェスチャーするのムズいなこれ……
とりあえずニコッとそんな雰囲気を込めたサムズアップを向けていた……
さて。天使は、蛇の言葉…吐息や尾を震わせる音による言語は話せるか、或いは解せるか?
どちらかでなければ、返答としては無、である。これは人間の言葉を9割9分理解していない。傾げられた首は奇妙に曲がったまま縦には振られないだろう。
もし、先程の呼びかけが蛇の言葉によってなされたものであれば反応はまた変わる。その場合、数度の瞬きを経て僅かな頷きがあるだろうな。
なだめられれば とても もとどおり むしろごきげん
あくまで おおきなおとに おどろいた だけなのです。
なぜなら わたし おいのりしてる いいこ だもの。
てんしさま てんしさま
おかえりなさい おかえりなさい
わたし ちゃんと おるすばん できていたのよ
……まあ。てんしさま へびさんと おはなししてる
……さすが てんしさま そんけいの しせんを むけます。
むーちゃんは後ろに。
「大丈夫にゃよ~むーにゃん」
よしよしとなだめてあげよう
「………………、……………。(無言の見つめ合い)
……………………。(同じ方向に大きく首を傾げ返す)
………………、……………。無言の見つめ合い)」
「……は、ハロー。貴方が蛇様でよろしいでしょうか?
私は天使ミルメコエルと申します。言葉、通じておりますか?
通じていたら頷いて頂けると助かります!!!」
つ、と視線が猫めいたヒトから外れる。入ってきたのは確かに羽持つヒトであるが、探していたそれとは違う。
……やはりこれだけ探して見つからない、ということは、誰かに“横取り”されてしまったのだろうか。惜しいことをした…等と考えてはいるが、全くの無言である。
よって目に見える事象としては、ロビーへ入ってきた天使を棒立ちかつ首を大きく傾げて凝視している、という形になるか。
「ミナミナ~皆々様方御機嫌よう。天使ミルメコエル、只今戻りまし……た?
これは……あまりよくわからない状況ですね!こんな時は……(ボスッ!ソファに座る)いつも通り過ごします……」
「……ぁ!」
へんとうに びっくりして
まだいるのなら みけねこさんの ちかくに こそこそ こそこそ
おてては おいのりの かたち
こわくないわ いのっているもの
こわくないの だいじょうぶなの
かわいめの威嚇にはぺし!と服の裾が尾のように動いて床に叩きつけられた事で返答とされた。あんまり真面目には受け取っていないらしい。
なんか無視された気がするので蛇語で威嚇しておいた。しゃー!
みけねこさん だいじょうぶ かしら?
へびと ねこ みまもり みまもり
して、探し人はそれで相違ないのだが。生憎人蛇は人に似た面をしているくせに人の言葉を介さない。よって、親切な助言はスルーされてしまうだろう。
羽のない少女に関しては、ちらりと見ただけで興味を失う。けども強い警戒を示す、手負いであったのを見た、もうひとりに関しては。
ぴたりと散策を止めて、静止し、凝視だろう。弱っているだろうか。表面上には異常は見られないか。
…蛇が苦手でないとしても、怖気がするかもしれないな。