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シャワーしつ おそろしいばしょ……?
「シャワー室は血の匂いがして、しかも温いです」
「★☆☆☆☆」
「ふうん。そっかー」
「まあみんな強く生きてほしいよね。なんか」
おかえりなさい
ぱくぱく。くちだけ
しょんぼりさんにも おいのりを。
……ともに しますか?
廊下からてくてく戻ってくる。
「ただいまもどりました。シャワーすごいぬるかった……」
開口一番文句。わりとわがままな顔のないやつ。
「…」
ぱちり。目を開ける。
「お祈りタイムだね。ここには被害者が二人もいるんだ。お祈りしたくなるんじゃないかな。」
独り言のように、目を閉じる。
こえにはださないけど
のどをふるわせたくは ないけれど
ぱくぱく ぱくぱく
おくちだけでも となえるの
みなみなー みなみなー
「犯人探しは終わった? 今はお祈りタイム? ミナミナ」
「シャワー室なんか血の匂いばっかでヤだよ〜。こっち暖かいね」
「おいのり、ね。」
なんとなく、両手を組んで解いて。
ソファに寝転がる。
「まだ暗くならないなら、目を閉じようかな。お祈りの中なら安全かもね。」
祈ることだけが、今できることかもしれない
少女を真似て唱える。
「ミナミナー、ミナミナー。」
あおいろてんしさまも きらきら
おててあわせて おいのり おいのり
みなみなー みなみなー
「……ミルメコエル様は懐が深いですね。」
「うふふ。ミナミナ……。」
「はい、天使は人類の味方です。」
「……蛇は、楽園の堕落の根源。悪意の象徴です。」
質問に対して自分から答えられるのは、ここまで。
──チャリ。 首輪の鎖の音が鳴る。
きっと きっと だいじょうぶよ
おいのりすれば いいのよ
ふあんな あなたに にこにこ にこにこ
みなみなー みなみなー
「魂……」
たとえば、悪魔と契約していたら
魂を捧げる約束をしていたら…
「持っている,と言えるのでしょうか」
「ミナミナ:」
祈り、あるいは懺悔?
てんしさまは オールオーケーで いらっしゃるの
みなみなー みなみなー
おててあわせて おみおくりします
「私といたしましては~魂をお持ちであるならオールオッケーですよ~……
悪魔様方までもオッケーオッケー、皆々様方ミナミナなのです……」
「おかえりなさいませミナミナ……少し出てきますミナミナ……」
「天使は」
「人類の味方?」
「人類、以外には、意外と厳しいのでしょうか」
だとしたらわたしは:
「ナイフ…… なんでこんなもの、あるんでしょうね。」
まさか、この部屋に送った何者かこの事態を見越して静観している?
──まさか、まさか!!
「そっか。無事ならよかったです。人類に災いがあっては耐えられません。」
「私も、次からは警戒しておきましょうか。」
「ないよ。キミと違って。オレはね、あちこち回ってた葬儀屋だからさ、すぐ襲われるかもって思ってたから。ま、多少無駄にした物はあるけど。」
「貪欲な物の怪、ねぇ。天使が言うと残酷に聞こえてくる。」
余計に目立つような真似はしたくない。
悪目立ちして襲われたくもないから。
「慌てなくても、文字が打てるまで待つから」
滲む苦笑に、苦笑で鸚鵡返し。
怪文書の解読が出来て良かった。少し安堵。
先立つ足に歩調を合わせて、廊下の方まで。
「まあ、五十人もいれば」
「一人や二人や五人ぐらいいるのでしょう。」
ゆるやかな諦観
「ナイフを手に取ったら」
「使いたくなる、そういう愚かなひとが」
「……あなたもですか!? その、おケガはありませんでしたか?」
慌てる。未遂とは言っていたが。
「……きっと、そうでしょうね。
そしてまだ彼奴は満たされていない。」
「貪欲な物の怪です。」
へび
くち ぱくぱく。
やっぱり へび わるいいきもの なのかしら?
くびを かしげました。
よかった。
こんな狭い空間の狭いコミュニティで
敵なんて作りたくないから。
あなたに向けた画面、自分で見直して、
ぐっちゃぐちゃの文字列を見て思わず苦笑する。
これでよく読み取ってくれたなと。
口の堅さは信じよう。
安心したようにやわらかく笑えば、
廊下の方へと歩き出すか。
「…………。」
そうか、他に襲撃者が居るのかぁ……みたいな顔。
「襲われたのが確認出来たのがさっきいた猫の子とキミと、あー、どっかの子と、オレ。オレの場合は未遂。他に出なければ今回は、この4人。少なくとも4人襲った奴がいる。」
「…蛇。猫の子から聞いたな。シャワールームにいたっけ。それと、あの蛇なら襲うに違いないって。もしかして、キミを襲ったのが。」
「……やっぱり、あの、蛇の人」
「……でも、多分、それだけじゃない」
「暗がりにリボンを見掛けた、とかも聞いたので」
ぱたぱたとスマホに打たれた文字、
全部を読み取れはしないけど。
「……ニュアンスは、伝わった」
「……うん、大丈夫。秘密にする」
「口は堅い方だから、安心して」
「……そうだ、言っておかなければいけませんね。」
「"悪魔の象徴たる蛇"にはどうかお気をつけください。」
「確証はありませんが…… アレは、人類の血を好む。」
「悪魔です。」
てんしさま てんしさま
ふえたら てんしさまたち
にこにこわらって おいのりします。
みなみなー みなみなー