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いつのまにか戻っていたもやも
壁際で あなたのこえにあわせてゆれていたかもしれない
にっこりされれば こたえるようにゆらめいてみせただろう
発声に慣れていなくても、上擦っていても、掠れていても。
歌に必要なのは、技巧ではなく魂(ソウル)なので。
聴いたものにそれが伝わったなら、その歌はきっとよきもの。
顔は見えないだろうけどにこにこして、小さなシンガーへとひらひら手をふりました。
のんびり空間……。
「……!」
おじょうず なんて いわれると おもってなかったから
わたしの こえは かわいく ないから
おどろいて、しまい、ました。
それでも
「……む、ー!」
こころから わらって おへんじ しました!
少女の歌声を邪魔をしないように静かに聞いていて。
それがどうやら終わったとみると、ぱちぱちと、惜しみない拍手を。
「……お上手ですね」
声が出せたのか、と少しだけ驚きながらも。
初めて聞く、少女の歌声を反芻した。
忘れはしない。
わたしも、あなたも、他の人々も。
確かにここに。この場所に居た。
……もしかしたら まっくろさんや ふわふわさんは きいてたのかも
だとすれば わたしは にっこりで かえすの でした。
「〜ら〜ら♪」
何時か、天使様達にも、聞かせようと、思いました。
賛美歌は、付き物ですから。
それから しばらくして
もとの わたしに もどって
おいのりを するの でした。
「るー、ら、ラぁ、らー」
この場の誰も、きっと少女すら知らない歌を、歌う。
「ららー、る、るゥ、あー」
時々上擦っても
元々掠れてても
「るりラ、ぁー、ららー」
光の無い瞳は、確かに色彩の無い部屋を見た。
みすぼらしい痩せぎすは、確かに荒廃の約束された部屋に居た。
直ぐに、己の信じる空想であり現実に戻るとしても。
今だけは
「ららら〜るるり、ラぁ〜♪」
現実に、確かに居たと声を上げたのでした。
「ぅ〜、ぁ、う〜」
きっと にぎやかは そうこだから
きっと ほうそうは やまないから
「ぁ〜、ぅ、ぅ〜」
私は。外に声を届けます。
「……ぅ、ぅ、ぅー」
ほうそう いがい しずかに なった ころ
ほうそうに まぎれる ように わたしの のどは ふるえる のです。
「ぃ、う、ぁ~」
「いってらっしゃい~」
お二人を見送って。
ロビーの隅っこでシーツを膝にかけたまま、のんびりする。
缶詰がある以上、資源の奪い合いなどもうする必要もない。
もはや脅威もない。きっともう、悲しいことはない。
終わりは見えた。きっと、これでおしまい。
ふわふわさんと てんしさまに てをふりました
あんしんしてね わたし おるすばん できるのよ
だって だって ここは あんぜんなのよ
つみきを おかたづけ しながら おもいました。
「ん。おでかけですね~。いってらっしゃいませ!」
「……よおし!私も行ってまいります。留守番は……頼みましたムー様!!!
あっ、出かけてみたいな~とかあれば大丈夫ですからね~~~!ミナミナ~!」
ひらひら手を振って、自分も外へ。
振られる手とともに 何度かゆらめいて
漂うように でかけていった
くみなおされたものの前で
しずかに しばらく 佇んで
あなたのそばに寄り ふわりと微笑んだ
「何処かで止みますかねえ。
叩いたら止みませんかね~。
止まなかったら、負けずに声を張り上げますか!ミナミナ~。」
「……フフ。」
揺れる姿に、近い速度で、自分も手を振った。
ゆらゆら してくれたので
にこにこ わたしはしました
それから つみきさんを
ふわふわさんに みえるように くみなおし ました
きれいでしょう?
きれいなのよ。
ゆれる手にあわせて ゆらゆらした
ちょっと しずかに してほしいは
おもいつつ
ふわふわさんに てをふりました
ふわふわさんが ゆれてくれたら
すこし ながめに ふりつづけようと おもいます。
呼ばれて ふわりとゆれた
無事そうな少女を見てにこにこしました。顔ないけど。
「えぇー連絡の声とまんないんだ。めっちゃくちゃうるさくなりますね……」やだ~。
声のする機械を見上げ、若干嫌そう。
そのうち慣れるだろうか。
コインが かわった おみずを のみながら まっくろさんを みました
わたしは ずっと げんきなのよ
おみずも いまも おいしいの
[以降、同じ放送が繰り返される]
DREAMからの自動放送:此方は自動放送です。空間完全放棄措置の完了をお知らせします。此方は……
「…………。
皆々様方は、今日もご無事でしょうか?」
「……ふわふわのお方も、今日までご無事のご様子……でしょうか。
ふふ、またお会いできて嬉しく存じますよ。」
「……」
怪我はなく?
「お怪我は……」
周囲を見回す。
満足に手当てできる医療品はもうないけど、止血程度なら。
来て去る姿にはぺこり、軽く頭を下げて見送った。
そうして祈る。今日も訪れる闇の時へ。
ただ ゆらめいていた
……まっくろさんが ふえたかも しれません
おめめを ぐしぐし しました
(うわーなんか連投されていたすみません……!)
この前刺した顔の無いシスター服の方……ナデシコさんだ。
刺した傷辺りを一瞥していたら会釈された。
遅れて会釈したら怪訝に思われないだろうか、と一瞬頭を過る。
一瞬なんだから、時間的経過は全く無いんだけどね。
会釈を返して、去るだろう(去るだろう2回目)