花占

 

 幸せ。不幸せ。幸せ。不幸せ。

 

 なんで花屋になったかって、そりゃあ、花が好きだったからです。

 花を醜いと思う人はきっと少ないでしょう。

 俺は綺麗なものが好きでした。囲まれていたかったんです。

 

 花は歪まないんですよ。ずっときれいなまま。

 萎れて土に還ることを、世界は死と認めなかったらしい。

 だから、花に罪はありません。

 物も言わないのだから、誰かの気を立てることもありませんよね。

 

 幸せ。不幸せ。幸せ。不幸せ。

 

 …………。

 俺もそうなりたかった。

 ただ自分らしく咲いて散るだけでよかったのに。

 いつだれがこうなるなんて関係ない。赤子だって歪み果てる。

 

 どうせ遅かれ早かれ皆こうなるというのに、皆安全圏に自分は居ると思い込みたがるんです。

 俺も思い込んでいたのかもしれません。

 泥のようになってまで尚生かされ続けるこの世界の事を、

 信用していたわけなんかじゃあ、全然、無いんですけど。

 

 幸せ。不幸せ。幸せ。不幸せ。

 

 別に、生まれや育ちが良くなかったってことは無いと思うんですよ。

 それこそクリスマスに毎年ケーキを買ってくれるような家に生まれました。

  

 昔から俺は陰気な奴でしたが、まともに生きてこれていたと思います。

 友人は少ないながらも、いい方ばかりでしたし。

 学校だって人並に通えていたと思ってたんです。

 

 幸せ。不幸せ。幸せ。不幸せ。

 

 どうしてこうなったんですかね。

 どうしてこうなったんでしょう。

 わかんないな。

 全然分からない。

 

 不死の決まりというには死病じみていて、

 人の形だというには、やっぱり歪みすぎている。

 人でなしを守ろうとするのも、石を投げるのも、人だ。

 俺は人でなしになったから何もできない。角一本で世界に関わる権利を失った気分だ。

 

 幸せ。不幸せ。幸せ。不幸せ。

 

 俺何もしてませんよね?

 まともに生きてきたつもりなんです。

 今から直したら許してくれますか。

 そういう話じゃないですよね。参っちゃいますね。

 

 ずっと、花占いをしている気分なんです。

 こんなになっても気にかけてくれている人はいる。

 ご飯はまだ食べられますし、歩けるし、買い物もできます。

 

 けれど人の目はありますし、嫌な顔をされる事は多いです。

 生きているだけで店の花に火を点けられるのはどうしてでしょうか。

 遠くない未来に化け物になるんだから、もう放っておいてくれませんか。

 

 幸せ。不幸せ。幸せ。不幸せ。

 

 俺は恵まれています。だから、被害者ぶるなと怒られる事があります。

 今ある物に目を向けろと言われます。

 じゃあ俺は幸せ者なんですか。それともやっぱり、不幸せなんですか。

 

 自分で決めても世界がケチをつけるんなら、もう何も考えたくないです。

 何も知らない子供がくれた植木鉢から、雪待草が咲いた時の俺の気持ちも知らないくせに。

 

 物事の全てを、花びらが尽きた結果に委ねられたら。

 

 そんなことを考えていたって知れば、皆笑いますかね。

 笑わないか。

 じゃあ、この話は無しです。

 

 生きる。生きない。生きる。生きない……