『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「天使に向けて愛の言葉、かあ……」
そういえばここ、悪魔も居たと思うけど。
悪魔に告白する際はどういう言葉を掛ければいいんだろうな、一緒に堕ちて下さいとかか?などと思った。
「………とりあえず、私はさっき自分で言っていた方法を試してくるよ。………綿積さんが起きたらそう言っておいてくれ。」
そう言いながらソファから立ち上がって。
ゆったりとあるいて行く。引き留められなければロビーを後にするだろう。
「……ありがとう」
憑き物が落ちたかのように、穏やかな表情で。
「少しでも言葉が届けられる可能性が高いなら……少しだけ安心だわ」
同時に、心のどこかで諦観を受け入れてしまっている、と。
思ってしまうのはじれったい。
>>18234
「お願い。自分のことダメだと思って、すぐに塞ぎ込んじゃうから。
例え再会が叶わなくても、
アンにとって、私との思い出を不幸せなものにはしたくないの」
祈るように手を合わせて。
医者は、考えていても聞こえている。心配することはないだろう。
暫くブツブツ何かを言っていたが、考えるだけ無駄だと一言、ソファに戻っていく。
「………」
もし仮に。この薬が雨水だったなら………
内側から、溶かされているのでは………?いやでも、そうなると痛みを伴わない理由がわからない………彼らはただ、身体が動きづらいとだけ言った、ならこれは本当に雨水だったか、定かではない………、薬は、作られてから長い期間がたてば、作用がなくなったりする。この自販機に残った液体は恐らく古いもの、だから古びた雨水のような何かになっていて………じゃあ、この薬は、一体………?
「……」
伝言より蘇生薬にみんなの関心が向いてるから、
もし直接伝えた方以外が落ちちゃった場合ちゃんと伝えてくれるかちょっと不安になったけど、
内容が内容なだけにもう一回言い直すのも恥ずかしいと気持ち縮こまっている少女。
「……科学的に、なんて考えても
無駄なんでしょうか」
「『今までそうであった』と、認識するしか」
蘇生薬を使われた人たちは今はもう……
一人を除いて、死んでいますけど。
……その一人は今?
あわてて、白衣のポケットの中を弄る。
………あった、注射器………。
これは、彼女が蘇生薬を使った後、私に興味があるならとくれたもので。
「………」
中にほんの少し残っていた液体は、まるで違うもののようだった。
「これが、雨水……だった…?」
>>18204
「願いをかなえることが、できなかったって、自分を責めないで。
二人で過ごした幸せは、私の中に残ってるの。
愛してる、魂だけになってもずっと待っているから。
いつか迎えに来てちょうだいって」
仄かに頬を紅潮させて、言葉を紡いだ。
「………どうし………なんだ、これ……昨日まで、………昨日までは………」
気になって、自販機の方へ歩み寄ってきた。
女が見ているのは、蘇生薬の欄だった。
「ただの、雨水………?」
>>18204
「アンに伝えたいこと」
頬に手を置いて考える。会いたい気持ちを抑えつけて。
「行くのと戻るの、どちらが簡単か。
戻ってきた例がないから、待っていてもらった方がいいのかしら。
でも私の命にも限りがあるし」
もっと伝えるべき言葉はあることでしょう。
→
>>18213
「あーっと、それもそうなんすけど……」
「蘇生薬、は見てみました?」
曰く、古びた雨水だとか。もう効果は無い、とも。
「……もう効果は無い雨水。
副作用。
もしかして」
今までの蘇生薬とは――
「大半のものが古くなってたりダメになってるのに
煙草やこういうのは無事なんですから」
食料などの消耗品に関するものだけはダメなのでしょう。
「ふーむ……再現性のあることは出来そうですが
どうにも難しいですね……」
>>18209
「どうしました……ああ。
自販機の必需品がダメになってるのは、僕は把握してますよ。他にも把握してる人はいたはずです」
「わりと馬鹿げた方法すねえ。
でもそうでもしないと行けないってのなら、まぁ――」
そこまで言って、自販機の前に。
ふと、指が止まる。
(…………、これは)
もう皆は知ってる、のだろうか。