『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「…おや探偵を目指しているんだ、通りでね。
じゃあ実質同業者だ、見習いでもね。
医者達みたいに仲間がいて嬉しいな」
ふふっと笑った。
「さて、そろそろ僕もシャワーを浴びて来ます」
そう言ってロビーを去るだろう。
「あぁいや、わからん………外科医はまあ、当然忙しいが………他は良くわからんな。」
大病院なんかに勤めてたらどんな人でも忙しいだろうが………
「ああ、権力構造に振り回されて日々疲弊していそうな人間クンのため息!
可哀想に、同情するよ……これからも周りの意見に流されず瀉血を勧めていってくれ!」
「医者と言うかまあ、私という医者としてならば、だけどな。………医者と言うのはめんどくさい生き物でな。人によって全く違う意見が出てくるのさ。」
はぁー、と大きく息を吐いて。たぶん、付き合いが大変だったのだろう………。
天使だった。どうも。
個室にいることも多いものだから、みかける回数もすくなかったかもな。
「あ 悪魔の囁き……!!」
天使的には戒めたいところ。
きゃんきゃん泣きながら刃向かってたかもしれません。
「実際、拭くだけでもかなり違うぞ。念入りに拭けば落ちるものはキチンと落ちるからな。」
風呂に入れない人にはそうするからね、と。
「バンケットにテーブルクロスが置いてあったらしい。まだ余ってるならそいつが使えるかも。」
「僕もシャワーは浴びてないですね。
代わりに来てた上着を洗って、濡れた状態で身体の汗を拭いて、また上着を洗い直して……ってやってました」
完全には綺麗にならないが、汗くらいならマシになる。
「悪魔とか天使とか知らん。彼は恐らく病人だ。医者としてならば体調最優先とするのは当然だろう。」
そのときその時で私はどっちの意見に近くなるか、意見が変わるような口振り。
微笑を口元に浮かべて視線に応えつつ、モニターを眺めている。
「おお、悪魔の意見も賛同多数。やはり今の時代は悪魔崇拝の方が強いってワケ……」
「まさに悪魔のささやきっすね~♨」
天使の心に従うか、悪魔の心に従うか。
「暖かいシャワー、できれば風呂と、あったかーいベッド、欲しっすね……」
「………いやまあ、正直君はシャワーとか体調の二の次でいいと思うよ。シャワーも冷たいし、余計に体調崩したら大変だ。」
なにか持病でもあるのだろうと言わんばかりの口振りだが、心配していることは確かである。
そもそも病気によっては代謝の動きが弱まっていたりする場合もある。そういう人は、体温も下がりやすいから体を拭くにとどめるのだ。
んふー………と一息。
「ベッドが恋しい」
ソファも柔らかいから床なんかで寝るよりはましなのですが………やはり中年には堪えるようで。
今度は普段来ない方の悪魔さんが。なんだか、珍しい顔が来る日なのかしら。
「行かなくたっていいさ、別に死ぬわけじゃないんだ……
体調が悪いなら、それを優先したっていい!
周りに臭いって言われても、知ったこっちゃあるもんか……」
やってきては、悪魔の囁きをしている。