『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「あ"ぁ、ご、ごめん………」
飛び退いた気配を察知。ビックリさせちゃったぁ………!
「いててて……おはよ…」
やっとこさ起き上がって伸びをしています。ぽきぽき………
そういえば、天使ちゃんを見るのは久しぶりな気がします。
「はよはよーっす」
あさのあいさつ。
「シャワー、浴びるっつより体拭くってしたほうが幾らかマシっすよ笑」
冷水への忌避感と動く気力のなさを勘違いしてる節、ありけり。
「天使としての役目が果たせなくて失格れすぅ゛……」
うんうん泣いていた。
呻き声が聞こえればはわっと飛び退いていたことだろう。
「ぐお………」
死にかけみたいな声を発して居ますが、起き上がって伸びすればおさまるのでほっといてよかです。
まあ、動きはプルプルしててスローモーションのようなのですが………
………そういえば、昨日の昼間より鉄臭さが強くなっている。苦手な人は苦手だろうか。
「はぁ……結局調査もあんまり出来なかったし、これからどうしようかな……」
資源は足りない。犯人は検討もつかない。
嘆きつつソファに座る。
「すねえ。気楽に~いうて気楽にいける訳もねーすけど、だからって落ち込み過ぎてるのもなんかなーって感じすね」
デッケ彼に同意しつつ。いってらっしゃい!
「お〜、皆おはおは〜ってね」
「今出来ないことは気にしてもしゃーないぜ〜」
なんて言いながらもふんわりとした調子で適当な場所をふらつきでも行くか
「天使サンも色々大変なんすねえ」
他人事のように。
……実際、他人事だ。
自分が死んだ訳では無いし、自分が魂の導きとやらをする訳でも無いし。
「本当は人が死んでおりますかりゃ」
「1天使としては導き天使がくるまでしっかり魂をお守りするべきなんれすけろ」
「力がないのでなんにもできまひぇん゛……」」
べそべそ…
役立たずの天使。
解放されるまでそこに魂があることを祈るしかない。
「っすね~。出来る事……なんかあるすかねえ」
そういや低気圧でヘバってた彼女は大丈夫かな、と思いながら。
場所が違えば会う事は無い。当たり前っちゃ当たり前なのだが。
「あ、おはようございます」
他のところから歩いてロビーにやってくる。
しばらく前には起きていたようで目はハッキリと覚めている。
「よっすよっす〜マブのほのち〜、デケー俺の参・上ってね…
今日もそこそ〜こ、出来る具合の元気いっぱいでやってこ〜ぜ!」
手を振る、ご機嫌そうに
「フォッ」
相変わらず変な声出しながら起床した壁際の灰髪である。
「お、デッケにーさん居るじゃんすか。
皆さんもオハヨーっす」
起きた所なので、おはよう。
祈りを捧げる人がいた。
信心深いシスター。
どうかあなたの神がその祈りに答えますように。
「あっ゛ いやっ゛ 大丈夫れふぅ゛」
かみかみ。
大丈夫ではなさそうだった。
「お、おー、すげ……相変わらずお祈りを崩さないな…かっけ〜、ヤバ!」
じっと祈る姿に少し驚いているかも。髪に関しては暫くじっと見て、あ、と気付いた声を出した。
「よっすよっす〜?皆元気か〜?」
いつも通りにエントリーだ!
「………っと、そこそこ皆おやすみちゃんだな〜?」
周囲をキョロキョロと眺めて、誰もいないソファの背に持たれて
「はい、承知いたしました。
どうか貴方様もごゆるりと過ごしてくださいませ。」
再度頭を下げて去っていく姿を見送った。
そろそろ自分も大人しくしているべきだろう。
ロビーの端の方、壁に背をつけて座り込む。
「……。」
あとはひたすらただ黙って、
眠くなる時を、待っていた。
「そう? なら良かった」
こちらとしてもなかなか悪くない時間だった。素直に愛でさせてくれる人間ってのは比較的稀有なものだし、
眠くなったら寝るんだよ、とだけ添えて。こちらも立ち上がって去っていっただろう。(背後離脱します)
「予め宣言してくださったわけでも、こっそり声をかけてくださるわけでもありませんでしたから……もしかしたら、そういう方なのかもしれませんね。」
残念です、と呟く言葉は少しだけ
穏やかさとは遠い声色をしていた。
「……あ、い、いえ!そんなことは!」
掛けられた言葉に弾かれるように、
慌てて立ち上がる。
くるりと貴方の方を向けば、深く頭を下げただろう。
「他愛のないお話にお付き合いくださりありがとうございました。貴方様のおかげで随分と心の内が片付いたように思えます。」