『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「…………少し、頭を冷やしてこないと、だな」
顔を伏せたままそっと立ち上がる。
どこに向かうかも決まらないまま、フラフラとその場を離れる。
『こちらは自動放送です。』
ザザ、ザ……
『……この不具合の原因って結局なんなんですか?』
『簡単な話だ。この空間はすべてを空間内で完結させている』
『……というか、そうならざるをえなかったと言うべきか』
『つまり……?』
『何も、資源は無から湧いてるわけじゃ―――』
ザザ、ザ……
『次の[快晴]は推定約六日後です』
また放送が流れ始めた……
「傷まないうちに置場なりを作っておいたほうがいいんじゃねえかなあ〜?」
赤色こぼした“モノ”共にはそれだけ。口だけで動く気配もやる気もない。
「…」
多分、もう1人いるらしいところまで行って、同じところまで運ぼうか。
白衣で、あまり目につかないようにして。
普通に触れて、普通に抱き抱えて。……あまりにも異質だろう。
淡々と、寝かせて、隠れるようにして…。
「手伝ってくれんの?助かるぜ。
あー、でも、無理はすんなよ?、無理してコレの仲間入りはだいぶキツいぜ?
布はダメそうなら…ソファで円陣組んで隠すとか、物陰に寝かすとかすっから」
「んで、見えないようにしたらムズいかもだが、いつも通りにな?」
「……」
息を乱しながらロビーへと入ってくる少年。
人々の視線はモニターに注がれている。
見る前から分かる。つまりは。
「……本当に」
「……嫌いです。こういうのは、本当に」
ここに来て、初めてそう口にした気がします。
猫がここまで感情を外に出すことは、珍しいことですが。
端へ寄せられていく『モノ』からは軽く目を逸らして。
「………」
フゥ、と息を吐いて。
目の前にある死体を見ても冷静でいられる自分に、なんだか嫌気が差していた。
職業柄、よく見るから仕方のないことなんだけれど。
「いくらこんな状態だからって……」
「だからと言って人を傷つける理由にはならないだろう……?」
「だって……し、死んでるんだぞ!?」
「人が……命が、今さっきまで息づいていた人がっ 物言わぬ肉になってしまったんだぞ……!」
本来ならば正常な反応なのかもしれない。
他人の死に直面した事のない、あまりに平和ボケした感性では過敏に受け止めすぎてすらいる。
「……この状況。まあ、そうはなりますね」
モニターを確認し、端へと移動していくものを視界に収めながらも、反応は返さない
「……手伝います」
「大きい布とか、必要かもしれませんね」
橋に寄せられていくモノ達の元に駆け寄っていく。
僅かに足は震えているが、それだけだった。
「よ、みーんなお揃いで。
状況確認しに来たんだよな、見てけよ、モニター」
と、言いつつ…『モノ』を遠慮無しに端に寄せていこうか
「昨日の襲われた話あたりから覚悟はしてたぜ〜〜。
俺は知らねえけど、別ンとこで焚き付けた奴がいるんだろ」
やらなくては、やられると
「しかしまあ馬鹿な奴だ、
これから恨みを買って生きるんだからよ」
「ああ、モニターの反対側なんかは見ないほうがいい。…ここも、お察しの通りだから。」
一応、後で隠しておこうか、どうか。悩ましい。手を触れるのは簡単だが…。
「……まあ、正直…この生きるか死ぬか、っていう極限状況は、1番人間の本性が現れる状況だ。…それが聖人のような人間は…ほんの一握りしかいないだろうな。」
諦めと…冷たさの混じるようなため息と共に、吐き出した言葉。…そうか。もう…本当に戦争みたいなものが始まってしまうかもしれないな…。
「6日後。……うん。一生[かいせい?]が来ないわけじゃなさそうですね」
「それ自体は良かったです。6日後になれば、何かが変わるってことですから」
それ自体“は”。見知らぬ顔の人々にはぺこ、と頭を下げた。