『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「私めはバンケットに行って参ります!
夜草様がまだ訪れていないのであれば、私めが脱出口がないか探してのちに報告いたしましょう!
尤も、行ってないのであれば本人の納得のため確認は怠るべきではありませんが」
「や。こんばんは……が正しいのかな、多分」
「体内時計ってあまり当てにならないしねぇ」
「ここに加えて夜ふかしと寝落ちの組み合わせと来れば、僕はもう時間感覚なんて欠片も持ち合わせてないね」
「いっそここは人の体内時計を流用させてもらおうかな」
「あのなあ自己紹介って初対面も初対面でするもんなんだわ。そっからすぐに関係発展するわけないだろ………」
珍しくなんか真面目そうな顔だが………あんまり重要でもない。
「いってらっしゃい、光の雨粒ちゃん」
「……しばらくは停電もなさそうだし、鍵付きの部屋にいた方が安全……うーん……」
人が多い方が安全ともいえるし……
「間をとって、ここの全員を個室に連れ込んで寝ようかな」
起きてる子だけでいっぱいになりそう。
「そんな!自己紹介しあった仲ですのに!
やはり家族構成や職歴といった経歴紹介にステージアップしていかねばなりませんか。夜草様こんばんは!」
「いや、そんなほぼ知らん人同士じゃハードルたけえだろそれ………」
こっちに視線を戻した女は、特に何かに気がついているわけでもなかった。
シスターさんは………寝てる!!
「ふむ、皆様就寝なされるのならいざ探索に赴くといたしましょう!
バンケットルームがどの程度広いかは知っておきたいですしね!
目的地はバンケットルームにございます!」
足を動かし出した。
「思ったのですが、盲目のスファレ様が鷹宮様の杖になり、鷹宮様がスファレ様の目になるのはリスクが高いんでしょうか?スファレ様の体格でどうこうできるなら、なんろかなりそうですが」
「パリピもオヤスミ」
「杖は……そこのシスターさんも欲しがってたね。
ここにはないってコト。
肩は……どーだろ。僕はちょっと小さすぎ 」
月さえ見えれば、時間の感覚だって少しはわかったのだけれど。
廊下の方に目をやっても、暗い外の景色が映し出されているだけで、月や太陽の光はおろか、星の瞬きすら見えない。
眠いな〜なんて呑気に、そろそろ寝ようか寝るまいかの談義を己の中で繰り広げている。
「…まあ、こんな昼夜もわからんとこにいれば…体内時計なんか、結構すぐズレよるからな。」
「相変わらずロクな収穫がないねぇ……」
なんだかんだでロビーが拠点になりつつある。
昨日から寝床の代わりに使ってるソファにどかっと体を投げ出す。
「なんだかネガティブな雰囲気だねぇ……ま、気持ちはわかるさ」
「確かにまた"あと7日"のアナウンスなのは気になりますね。
まあまずそれ以前に親交関係と資源管理が課題でございますね!
皆様の体内時計を信じるのであれば眠たくなるような夜なのでしょうが、こういう時こそ親密な談話が出来るというモノ!
バンケットか、食堂でしょうか……」
「杖なぁ……俺は見てないかも……」
「杖代わりになれたら良かったんだけど〜、俺はデカすぎるし〜…なんなら眠たくてふらついちまうからな〜…」
申し訳なさそうな顔をしつつ
「つーわけで、すまね〜…俺も寝るな〜…」
と言うとここを離れるかも
「それは嘘や捏造って言うんじゃないかな……」
おお、今ですらそれを塗り重ねているのに。
「星はいつだって雨粒ちゃんを見守ってるよ」
「雨は必ず上がる。雲は晴れる。月はそこで照らしている。巡る雫を、命を」
「だから、えっと……おやすみ」
「ハァ…1日目…いや、2日目なのか。まあ…それでこれとはねえ…まいったな。」
もうちょいいい感じになるかな〜なんて楽観視していたんだけれど。どうもここはそんな甘くはないようで。
「アタシも考えたくないけどねぇ。このままなら正直、どう考えてもアタシは助からんよ。配給がまたあれば別だが…アレじゃ、あまり期待できそうにもないね。」
余った足だけをソファからぶらつかせて。
「寝る奴おやすみな〜…。」
「ないものは語れないのならあることにしてしまえば良いと思いますが……いえ(これ以上は私めが嘘つきであることを話してしまうので)やめておきましょう」
そんな感じでアルカンシエルが沈黙以降、満足したのか他のことを考えた。
「あ~そういえば大昔のあの形式に憧れるんです!5×5のパネルがあって、それぞれにジャンルと難易度と獲得ポイントが違うんです。それで、クイズに正解するとポイントを獲得。これって資源の有効活用ではありませんか?」
クイズのことを考えた。
「ま、アタシが死んだら邪魔じゃないとこに置いといてくれ…。水の中はちょっと嫌だわ…。」
水に沈んだ死体の末路を知っているせいか、水場は嫌なようで。
まあ、かと言ってここで腐るのも申し訳ないのだが……。