『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「タチヤマ様に褒めていただき恐縮と至福にございます!」
「しかしアルカンシエル様の提示した問題はなかなかに悩ましいものでございますね!
生まれたばかりの命……人なら赤ん坊で、長く生きていたい命……人なら例えばご老人でしょうか?
この情報のみの尺度だと、赤ん坊を残し続けて一定の寿命に達した時点で切るという考えやご老人を生かし続ける政策を取り続けて出生を軽視してしまう状況になったりならなかったりしますね」
「ジェグっち〜?覚えた!」
覚えなくてもいいと言われると覚えたくなる性
「番号が強さだった場合俺最強か最弱のどっちかじゃん、ヤバ!」
「うっうるさい…、君らの善性にかけてるんだよ…」
この女、善性に賭けすぎてる。普通に公開されそうじゃん。
「え?いや、は、はるちて…いや、そんなでもないぞ…。むしろ同業者に心折られるってか…患者より看護師が1番怖えぞ…」
初めてのあだ名にだいぶ困惑しています。が、話はちゃんとする。
「ハルち医者なの!?うわマジ!?ヤベ〜!!すげーじゃん、中々にメンタルとかベキベキなりそ〜な職業なのにさ〜!」
「あ、俺も番号何番か見てね〜や」
モニターを見る。
「1番ですげ〜ウケんだけど、オモロ過ぎない?」
「アルカっち〜、なんとま〜すげ〜レインボーでパリパリしてんよね〜!空を走り回るって良さそ〜」
「コンニキ〜、中々にオモロトークですげ〜な〜って思ったぜ!」
「ん〜と、アタシは…綾川 遥希って名前。確か…リストだと37番…だったと思う。一応…外科医だったよ、この間までは…。」
詰まりながら、もう一度自己紹介。初めましての人もいますし。
けれども、後半、絶妙に引っかかる言い方で。
「年齢はまあ…三十路…。…知ってるやつ黙っとけよ!!まだ心の準備!!できてねえから!!」
「失礼、喉が枯れました」
「入江様に、レジアール様に、察するにマブのもう1人の方がタチヤマ様に。あなたは前にお会いして挨拶しそびれましたね、ワタツミ様。
改めまして、コンテキストと申します」
「あぁ…そう言えばそのことなんだけど…アナウンスの音声的に、どうも日数が伸びたらしいんだよね。7日のままでさ。」
これが…かなりの不安要素なんだよな…と思っている。
「あ〜、自己紹介か。…じゃあ…流れに乗っとこう、かな…」
また同じソファに座り直して、何をどう紹介すればいいかな…としばし悩みタイム。
「遠い過去がダブってンね……」
「僕はアルカンシエル、虹をかける星の欠片!太陽を追いかけて空を走り回るのが仕事なんだよ~」
「僕に遠い過去なんて無いよ。きのう生まれたばっかりだから」
「……じゃあ、自己紹介に困ったきみがいたら。
きみは生まれたばっかりのいのちと長く生きてきたいのち、どっちを生かしたい?」
「ララちに爆速でシャワーしてたのバレたの中々にオモロなんだよな〜、レジちは行くとこ見てただろうからま〜自然だろうけど〜」
「ワタっち〜、中々きれーな名前してんね〜よろよろ〜!
そうそう、なんなら顔見知りと言わずにマブダチでも良いぜ〜?」
「せっかくだし僕も便乗させてもらおうかな」
「こんな状況だ、顔見知りは1人でも多い方がいいだろうしね」
こほん、と咳払いをひとつ。
「僕はワタツミ シズク。綴りはそこの液晶の下から5番目に書いてある」
「しがない大学3回生さ。残りの6日もよろしく頼むよ」
「いえ、善人だから生きるべきだ!と訴えるというよりは、刃を取った持たざる方々に持たせるのです、縁を。
遠い過去に無敵の人というスラングがございましたが、彼らは個人の事情すらも刃を取りました。
しかし、それは彼らに失うことを恐れるモノを与えなかったからです。
遠い過去の風習に、食育学習で豚を育てたら食べることが出来なかったという話もございます。
我々には愛着と言えばおこがましくはありますが、親愛が足りないのでございます!
それに、個人の裁量で善悪を判断し裁く権利など誰にもござい
「させていただきますね」
とはいえ、ラララさんとタチヤマさんはあまりにも顔見知りすぎる。もはやいわば「マブ」といっても過言ではないのだろう。
「レジアールと申します。お好きなように呼んでくださいませ」