『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
>>4001 綾川
「ええ、殴られた? まあ人殺したいヤツいたらヒーラーから潰すか…?」
今更貴方が被襲撃者であると理解した素振りで顔向けて、倫理観を欠いた相槌を。医療知識があるやつから先に襲われる可能性はあるんじゃない?と言いたいらしいけど、あんまりすぎないか?
リストを眺める。……流石に、まだ。
それでも怪我人が多数出たようだった。
幸い自身の身はなんともない。
……なんともないのだが。
「なんとも、まあ……」
他人を傷つけることに躊躇のない存在が、
随分と多いようで。……辟易する。
「確かにな…資源が無くなったら死ぬ、とかあるなら…まあ、あんだけしか配給されないのなら…相当取り合いにはなるよな…さて…」
本当にどうしようか…。正直、誰かから奪うなんて考えられないし…。
「…?おい…不具合…ってことは…」
みるみる顔が青ざめていく。何が起きたかわかったらしい。
「ああ、もう一人居たんですね。って、両方襲われてる……」
思っていたよりも大変だ、と考えていた時、ふと通信機の声が耳に入る。
「……うん?システムに不具合?どういうことだろう……?」
「――戻りました!すみません、食堂も大変そうで、お医者さん自身も襲われたみたいで……」
医者は連れてこられず、一人で戻ってきた。
「シスターさんは……まだ気絶してますね。うーん……」
「……この資源、『必ず持っていてください』ってアナウンスで行ってますが」
「なくなったら、どうなるんでしょうか」
ご飯や水が得られなくなるだけ
それだけなら別にいいだけれど
……医療品も買えやしないのでしょうから。
「いや〜そういうわけじゃないかもだぞ…何せアタシだってめためたにされたし…」
人間である彼女もボコられて資源を奪われています。
なんかそういう血気盛んな奴らがいるとしか今は思えません。
「まあどうもこうもあっても、今は次までにゆっくりする他ないな…。」
怪我もしちゃったし、あんまりたくさん動くのは得策ではないかも。
「……………おれそんなだめだったかなあ、」
「多分化け物って言ってきた子だろうなあ刺してきたの…」
暗がりで下手人は分からなかった、という主張らしい。もっとも本当に襲われたのかは定かではなく、付着している血痕が本人由来でない可能性も多々あるのだけれど。ソファ上でぼやぼやとぼやいているので喧しかったごめん。
>>3808
「ハァ…流石に気ィ抜いてられんくなったな。マジでどーすっかな…」
ため息をつきながら、他の部分も手当しつつ、ソファにどかっと座る。
参ったな…
「俺ァ安心していいぜ。
しょーじき元のとこ戻るくらいならここで死にてェしさ」
軽薄な笑み
「それこそ人を傷つけてまで生きたいとは思わねーよ。
約束する、なァ?」
「おかえりーっす」
戻って来た人へ。
「いってらっす?お気をつけて」
去り行く人へ。
「うへー、そんなにすか。
まぁむべなるかな、すねぇ……」
「ハァ…気を抜いてたとこ襲われるなんて卑怯なやつだよ…。しかも、資源もこれじゃ、明日まで持つかどうかわからないね…」
奪い合いなんて物騒なこと…なんて思ったけど、支給料がこの人数にしてはあまりにも足りなさすぎる。DREAMってのは舐めてんのか…?
「……猫は、こういうの嫌いです」
「誰も信用出来なくなる、こういう状況が」
耳はたれたまま、しっぽも動かなくなり。
忙しなくあちらこちらを見ている。
「雨粒ちゃんは大丈夫……僕が、月が、星が、ずっと見てるから」
「だから大丈夫」
「喧嘩なんかしなくたって」「暴れたりしなくたって」
「怯えなくたって、大丈夫。僕がここにいるかぎり……」
「……。」
「生き残るんだ、絶対に。……ただで死んでやるものか。…ただで、消えてやるか。」
何かを呟いて、去っていく。その目には覚悟が宿っていた
なんだかんだ、ぬるりと戻ってきた。どうやら救急道具をくれる人がいたらしく。怪我を手当しながら帰ってきた。
「ただいまー。バンケットと…プール以外は…全滅っぽかったね。どこでも争いが起き始めてる。やばいよこれは…。」
「っすよねー。
今のこそ、停電の瞬間を狙ったみたいすけど」
表立って切った張ったの沙汰にならなきゃいいんだけどな、とは言わずにおいた。
「……これで、『動機』が生まれましたね」
7日間待つだけ
それだけならみんな何事もなく、帰れた。そのはず
だけど今『人を殺す理由』が生まれてしまったから
『人に危害を加える理由』が生まれてしまった
……猫はその事実を、ゆっくりと飲み込み始めました。
>>3818
「うーん……うん、ケガはないみたいだけど、一応医者の人呼んでこようかな。確か居たよね」
そう言ってモニターを見る。現在位置を確認して、小走りでロビーを後にする。
「ハァーッ 俺は悲しいっすよ、どうして皆仲良く出来ないんすかねえ……」
多少の外見の違いこそあれ、暴力を振るう必要性があるのかどうかは甚だ疑問だ。
暗転、その後。
「……ね。やっぱり、"まだ"だった」
「事件はこれから始まるんだ」
無傷の身体を尻尾が撫でる。いつの間にやら乾ききって、絵の具の匂いはそのまま。
「雨粒ちゃんだいじょう、ぶ……」
はっ倒された影。
動けるならまだ大丈夫なのかな。そうかも。
去ってゆく姿に手が伸びて、宛もなく彷徨った。