『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「……そ、そう簡単には、行きませんか。」
「後で、自分でも見に行かなきゃ……」
鵜呑みにする訳では無いが、それでも直ぐには出られなさそうでショックを受けている。
「あーそうだね…さっきプールの方まで…行ってきたんだが…かなり異様だったね。一応、中庭とかに繋がる大窓とかは…あったんだが…。」
どうも、絶対に割れないことが感覚的にわかってしまうほど異様な窓…らしい。
「これぐらいしか…なかったかな…、なんていうか、あとは廊下だけれど…ここもおんなじ窓で…」
力になれそうなことはどうやらあまりなさそうだ…。当人もわかってるのか話ながらしょんぼりして行っている。
「……変わった、犬?なのね。
取り敢えず、貴方もお目出度う。」
雨と共に産まれる、よく分からない。
「……取り敢えず、私は今日から七日間。
丁度今が大切な時なの…だから。」
「……あ、ここの部屋以外に行ってきた人?
何か、脱出…ここから出る方法はありませんでしたか?」
「あ〜…寝床…ならアタシは…今日はここで決定…かな…。他探しに行ったんだけど…個室はなんか、めぼしい寝具っぽいのもなくてさ。」
ソファでゴロンゴロンしていようという魂胆。ここならまだ体痛くなってもマシだろうと。
「ロィナ・アルレット様で御座いますか。ユウガオと申します、どうぞよろしくお願い致しますね。」
「祝う、祝わないは置いておいて……覚えていない、知らないなどという方は流石に初めてお会いしました。」
「(………………)」
なんかフルネームで呼ばれるの、新鮮だな…。
「てかもう1人誕生日なの?えと…おめでとう…。」
オロオロしながらも、言っておくべきだよな、なんて考えたのか、誰なのか確かではないが、お祝い。
「僕は雨とともにうまれて、星と共に去るもの」
「……ここの雨でうまれたわけじゃないけれど」
起き上がる影に、増えた人。
挨拶代わりにひらひらと虹色の尻尾を振る。
「僕の方が珍しいでしょ、うまれた日なんて大切なこと忘れるはずないもん」
「おや、アルカンシエル様は生まれたばかり……なのですね?そして本日がお誕生日かもしれないと」
「であれば、貴方様もお誕生日おめでとう御座います」
「ただいまァ〜…」
の〜っそり。行った時よりもさらにスローな動きで帰ってきた。ちょっと湿っぽい、塩素の香りがついてる。
さっきのお礼には手をヒラっとさせてたかも。
「うまれたばっかり???」
こんらんしてきた。
「私は毎年毎年、しっかり数えてた事が……
村の外ではこんなぞんざいな記念日なんですか???」
「それは……もちろん、村の皆とかに祝って貰う方が一番嬉しいですけど……」
状況が状況なので。
「……ちょっと落ち着いて来たので、他の部屋で脱出できる道を探してきてみます。」
立ち上がって、ロビーの外へと向かうだろうか。
「誕生日のお祝い、わたくしはあまり経験がないですねえ……」
「もちろん他の皆様のお誕生日をお祝いする気持ちは御座います故、お誕生日おめでとう御座いますと心から言わせていただきますけれど」
「…誕生日、皆さんお祝いする文化無いですか?」
何か聞いてる限りそんな反応が多そうで。
どちらかと言うと、帰る帰らない、帰る場所が無い話ばっかり。
「あ、お祝いは嬉しいです。ありがとうございます。」
ちゃんとお礼は言える子らしい。
「うーん、そうですねえ……わたくしとしましても新天地と胸が高鳴っておりますが、見知らぬ土地で一人眠るというのは少々恐ろしい……お邪魔でなければ此処に本日は留まらせていただきたい所存です。」